この記事は「乳がん体験記 森さん編①乳腺症だと思ったら乳がんだった」の続きです。
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クリニックからの紹介状を携えて、総合病院を訪れたのは、6月はじめのことでした。夫の入院や、私が出産でお世話になった総合病院は、老朽化のため新築移転し、生まれ変わっていました。明るくきれいな院内には、カフェや、コンビニ、レストランまであります。以前私が出産のため入院した時は、小さな売店があるだけでした。
新築移転がもう少し早かったら、ここで出産できたのにな……、でもまだ2人目を出産できる可能性はあるな……なんて、その時はのんきに考えていました。
ここに出産以外の理由で入院することになることは、想像もしていませんでした。マンモグラフィーの検査をしたらすぐに結果が出て、やっぱり心配のないものだった、と安堵しながら帰宅するつもりでしたから。
総合受付で名前を呼ばれるまで1時間、乳腺外科に移動してから1時間待ちました。そしてマンモグラフィー検査を受けることになりました。私にとって、初めてのマンモグラフィー検査でした。マンモグラフィーは痛い、という噂を聞いていましたので、ちょっとドキドキしていましたが、思ったほどではありませんでした。
撮影台に乗せた乳房を、板のようなもので挟んで撮影するのですが、ぎゅうっと力を入れて挟まれるので、痛い、と聞いていたのです。私は、もともと乳房が小さいので、検査しずらいだろうなあ、なんて、そんなことを気にしているうちに、数枚の画像を撮り、検査は終了しました。
それから、乳腺外科に戻り、結果を聞きます。担当医は、穏やかな感じの、まだ若い男の先生でした。その先生が、マンモグラフィーの画像を見せてくれました。乳房の形に映し出された写真に、白い筋が見えますが、私には、何だかよくわかりません。でも、先生には、これでしこりがあるのか、悪性か良性か、わかるのだろうなと、思っていました。
だいぶ時間がかかってしまっていたので、早く帰りたかったのですが、先生の言葉は意外なものでした。
「マンモグラフィーには、特に何も映っていないですね。エコーで見てみましょう」
え? という感じでした。
クリニックでエコーをしたらしこりのようなものが見えたから、詳しく知るためにマンモグラフィー検査を受けに来たのに。マンモグラフィーの検査で、すべてがわかるものだと思っていたのに。
ベッドに横になり、エコー検査を受けました。乳房にジェルのようなものを塗って、その上を機器を滑らせて、映し出された画像を、先生がモニターで確認していきます。若干くすぐったい感じはありますが、痛みは一切ありません。先生は、ゆっくりと時間をかけて見ているようでした。
すると、クリニックの見解通り、しこりが2つ見つかりました。ただ、エコーだけでは悪性か、良性かわからないとのこと。「おそらく、心配のないものだとは思いますが、念のため針を刺してみましょう」
「針?」
思いもよらなかった言葉でした。注射器のようなもので、しこりの細胞を採取して、検査するというのです。急遽、午後に予約を入れられてしまいました。昼食後に、もう一度来て、細胞診です。そんな検査が必要なほどだとは、思ってもいませんでした。
でも、先生の口ぶりでは、深刻なものではないような感じでしたので、それほど心配はしていませんでした。子供のお迎え間に合うかなあ……、お昼ごはんどうしようかなあ……、検査は痛いのかなあ……、私の心配といえば、目の前のそんなちっぽけなものだけでした。
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