この記事は60代の男性に、肺がんの闘病記を書いていただきました。
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肺がんであることを勧告され抗がん剤との遭遇
昨年の事です。もともと腎臓を患い定期的に大病院の循環器科へ2か月に一度のペースで検診を受けていました。ある時、咳が止まらないので主治医に咳の事を話すと早速、呼吸器科で検査診療を受けることを勧められ受診しました。
数日後呼吸器の検査結果が出て肺がんの疑いがあると告知されました。ところがその頃、仕事の都合で転居を伴う異動を行い、主治医に転居先の病院へ紹介状と治療の経緯、検査データ等の資料を頂き、転居先の地域総合病院で早速受診しました。
呼吸器系のドクターが主治医となり、腎臓と肺がんの疑いについて治療の優先順位を立案してくれました。肺がんの疑いの方が緊急性があり、癌かどうか確認のために一通り検査を行い治療法を考案しましょうと告げられました。検査の結果やはり肺がんです。ステージ1.5の肺腺癌であることを告げられました。
このようなステージ1.5という浅い進行状況ですが、抗がん剤からなる副作用は確実に襲ってくるのでそれらを経験の中からお伝えしようと思います。
その後早速入院し治療の準備に入りましたが、私の場合腎臓疾患もあるので癌の切除も難しく、放射線も抵抗力の範疇から得策とは言えず、安全な抗がん剤治療を推奨します。とドクターから治療方針がでました。
入院2週目から抗がん剤治療がスタートし、私の病状に最適である抗がん剤アブラキサンを点滴注射にて投薬することになりました。そして投薬前に注意事項やスケジュールが提示され、週に一回点滴注射による投薬が始まりました。
点滴注射は
①吐き気止め グラニセトロン3㎎ 100㎖ 30分
②アブラキサン点滴 100㎎ 30分
③生理食塩水 100㎖ 30分
3段階で点滴を行いトータル1時間半の行程です
ポジティブな癌闘病とは。実は副作用との闘いである
癌になると芸能人は「癌と闘ってきます!」と、勇ましいコメントを発して闘病生活に入られますが、私の場合、ステージ1.5という進行度が浅い状況ですが、闘病生活の体験から痛感した事は癌そのものとの闘いではなく、実は抗がん剤の副作用との闘いだということでした。
なぜならば、私の場合、癌が他の部位へ転移したり、癌患部そのものの痛みがステージ1.5という進行状況で、幸いなことに自覚症状がありませんでした。
したがって、抗がん剤は癌組織の撃退の役割も果たしますが、一方で正常な細胞も壊してゆくことも同時に行われる為に正常な細胞も破壊されかねず様々な予期せぬ症状に遭遇してしまいました。そして癌の自覚がない治療中に副作用が出てきて初めて癌治療を実感したのです。
抗がん剤投薬が始まって数種の副作用が始まる
アブラキサン投薬の1週目~2週目は特に副作用なる自覚症状はありませんでしたが、3週目あたりから徐々に副作用が出始めてきました。今になって思いますが抗がん剤副作用とは私が思う限り3種類あると考えられ、
①自覚のある副作用(自己確認)
②自覚のいない副作用(日常の基礎データ。病院側の確認)
③自覚のある副作用が招く不可抗力からくる二次的作用(自己確認)
です。
これらは治療が終了してからの感想ですが、時として①~③が同時進行する場合もあり、事前に病院や薬剤メーカーから提示された副作用情報にプラスして考慮しなくてはなりません。ゆえにステージの進行が浅い時点では抗がん剤の副作用に対し変化を早期にキャッチしその対策を練ることが重要であり、結果ポジティブな闘病生活実現に繋がると感じました。
自覚症状のある本来の副作用①に、二次的作用である③を付加した副作用について記載して行きますが、特に③の副作用二次的作用には個人差があり、体質や生活慣習から事前に予防対策も施しやすく、同じ病棟の経験者等から情報はチェックした方がよいかもしれません。
基本的副作用の情報はネットや病院からも発信されますが、不可抗力からなる二次的作用については情報が少ないので患者自身が注意管理してゆかねばなりません。
では①から③までを解説していきます。
自覚できる副作用
病院からはアブラキサン抗がん剤副作用の情報として「脱毛・味覚障害・怠さ・浮腫み・手足のしびれ(末梢神経障害)・関節痛・発疹・発熱・筋肉痛・吐き気・不眠・口内炎・便秘・肺炎」があると聞かされ、これらは私の場合抗がん剤投与3週目あたりから殆どの症状が徐々に現れ始めました。また本来生じる副作用の他にその副作用からさらに二次的作用が潜んでいる事もそこで実感しました。
これらの自覚できる副作用はその症状を抑制したり、治療をしたり、放置することはなく、看護師や医師から薬を処方して貰うなど対策を施してもらいます。私の場合、副作用からなる異変に対し皮膚科、脳外科、眼科を案内され治療をしました。
特に抗がん剤を始めてからはめまいや感覚障害が生じたため脳外科、眼科で視神経の検査や脳のMRIも撮りました。皮膚科は副作用で発疹がはしかのように体中にでき、塗り薬を処方してもらいました。
関節痛・筋肉痛に対しては痛み止めの湿布や飲み薬(トラムセット)を処方してもらい対応しましたが、飲み薬が副作用を招き嘔吐する原因となりました。このように副作用対応の薬にも更に副作用が生じることが分り副作用が副作用を更に呼ぶことも体験しました。
そのほか一例ですが、自分のミスで二次的作用(不可抗力)を含んだ副作用状況を報告記載したします。
まず最初に気づく自覚症状は脱毛でした。枕や寝具に抜け毛が付着し毛が抜けはじめたことに気が付きます。最初はその抜け毛の量にショックを受けますが、冷静に対応すべきところです。ここで生じる二次的作用は、抜け毛で目に傷をつけてしまう可能性があること。
男性の場合、全部抜ける前に予め丸刈りにする方が多く、(女性は抵抗があるので丸めずそのままのようですが)私も丸刈りにしました。短髪にした分抜け落ちた毛の処理が楽になります。ゆえに大抵の人は抗がん剤投薬が決まった時点で丸刈りにするのです。
しかし、短い髭の様な抜け毛が枕や寝具に付着することで、涙目をこすったりするうちにその短い抜け毛が目に入り眼球を傷つけることも考えられます。現に私は眼球を傷つけ、抜け落ちた毛がとげの様に眼球に刺さってしまい目が開けられなくなりました。
予防策としては枕元に粘着ロールのコロコロと目薬を常備し、周りを清潔にする事と万が一抜け毛が目に入ったら擦らずに点眼することです。このような不注意で無駄な治療は避けたいところです。
自覚できない副作用
自分で自覚できない副作用としては、血液検査から出るデータで血中の白血球、赤血球、血小板の減少からくる副作用で、確実に抵抗力をなくす為、発熱や風邪をひくなどの他の病気を併発する可能性があります。
これは自己管理ももちろんですが、看護師やドクターが緊張感を持ってチェックしています。ルーティンとしてはうがい、手洗いと人ごみの中に行かない。満員電車や映画館など大勢人が居る所は全てNGである事。
仮に外出する場合はマスクを着用し雑菌や病原菌の吸入を防止することなど。入院中は管理されているが外来対応になった時に日常生活でルーティン化することが大事です。
入院中と外来
私はおよそ2か月の入院で退院し、抗がん剤治療は外来で受診しました。入院中は異変があると即座に看護師さんに処置してもらえますが、自宅療養になりますとすべて自己管理の範疇となり、だらしない生活は危険を伴います。
私の場合、抗がん剤投薬8週目付近で副作用で生じる足の痺れ、関節痛、怠さが辛くなり1か月投薬を休むことになりました。その間、外来も休みましたが、一ヶ月後に再開されるとまた副作用が出始めました。
抗がん剤治療を再開して3週目に呼吸困難が生じる事をドクターに告げると即刻入院を勧告され、緊急入院。診療の結果、間質性肺炎であることが判明し、当面肺炎の治療が優先されました。
抗がん剤治療はしばらく休みとなり、肺炎治療の際に投薬されたプレドニン錠剤5㎎が肥満化する副作用があり1ヶ月の短期間で20㎏近く太ってしまいました。
また、抗がん剤投薬中に生じた副作用である足のしびれ、関節痛の対応に飲用していたリリカカプセル錠剤も太る傾向と腎臓に相性が良くないことが分りました。
その結果プレドニン錠は量を減らし、リリカは飲用を中止しました。
肺炎の未完治と肥満の影響で呼吸困難の頻度が増しパルスオキシメーターによる血中酸素測定は欠かせませんでした。その測定値SPO2値は70%台になる事もしばしばで歩行も困難になりました。安静にするとSPO2値94~5まで平常値に戻りますが、現在もこの間質性肺炎に苦しんでします。
間質性肺炎が完治しない状況で退院し、日常生活に戻りましたが階段や坂道は方向困難を極め苦しい思いをしております。
肺がんを患い思うこと
肺がんを体験して早い時点で癌を発見し治療したため、お陰様で今では癌細胞はすべて消滅しました。ただし、抗がん剤の副作用は各所に残骸を残しています。手の指先、足先のしびれ、浮腫み、関節痛、感覚障害などは元に戻れていません。
また癌細胞が何時出てくるかもわからないため、検診は真面目に受診しており、PET CTで転移はないか、脳のMRIでも脳への転移はないか、肺がんの特徴を理解し、自分でも注意していかねばと思います。
私の癌の闘病で得た副作用の波及について皆様に少しでも参考になればと思います。ありがとうございました。
[参考記事]
「子宮頸がんの自覚症状が現れ始めたのは告知の3年前」
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