今回は「うつ状態」である50代の女性に「どうやってその状況を脱出したのか」を解説します。
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>簡単に自己紹介をお願いします
私は五十歳の女性です。高校卒業後、求人誌の編集の仕事を経てプロのライターになりました。
二十歳の時に結婚しましたが離婚し、現在はひとり暮らしです。子どもはありません。俗にいう「毒親育ち」のため、実家を頼ることもできず、肉親とは二十年以上音信不通の状況です。
四十代の頃、立て続けに大きな病気を経験しました。子宮頸がんで広汎摘出手術を受けたほか、脳梗塞、膠原病とその治療のために使ったステロイド剤による骨粗鬆症で腰部圧迫骨折をするなど…です。
>何だか大変そうですね…病名だけ見ても相当なご苦労を…
離婚後しばらくは普通に会社勤めをした時期もありましたが、病気の治療のため繰り返しの休職を余儀なくされ、結果退職。
現在は自宅でマイペースでできるライティングでどうにか食べている、という感じです。
子どもがなくってよかったな、と今は思います。自分ひとりならどんな貧乏暮らしでも、まーいっかって笑い飛ばせますけど(苦笑)子どもにはやっぱり惨めな想いなんかさせられませんし。
>おひとり暮らしですか…
ここでは割愛するんですけど、相当複雑な成育歴を負ってるもんで家族っていうものは幻想ではないかって常日頃思うほどです。家族って近い関係でしょ?近すぎて息ができない状態でした。もしかしたら…近いからこそ一番どうしようもない「他人」でしかないかもですよ。家族って。
>家族こそ「どうしようもない他人」。なかなか激しいご意見ですね…
私は幼少時の虐待や別れた旦那からの暴力などをフルで経験しているので、家族って他人だとしか思えないし、ひとりのほうがずっとマシだと思うくらい。
いろんなことがあり過ぎたせいで、しょせん「ひとり」だと思うようになりましたね。ですが…今回のうつ病を抜けるということを考える上で「しょせんはひとりぼっち」。そう思う癖が逆に効果的に働いたんですね、私の場合。
>普通、うつ病の患者さんには「あなたはひとりじゃない」と言い聞かせるのが望ましい対応だということを聞くのですが
たいていはそうでしょうね。ですが…私は子どもの時から何とはなく変わっていて醒めていたもので、どうせ「最後はひとりなんだ」って思うような感じで…。言い換えるなら他人に期待するから裏切られる、って想いが心から離れないんですね。
結果的にはこの「自分はひとりなんだ」って感情。他人には期待しちゃダメなんだって想いがうつの状態から自分を奮い立たせる力にはなりましたね。
>しょっぱなから強気なご意見で(笑)
ですが「自分はひとりなんだ」という思考は、うつの方には絶対にNGな思考だとも思うのですが、後ほど詳しく触れますが私は「うつ病」ではなく「うつ状態」でした。この両者は正確には違うものです。
確かに「うつ病」の患者さんはもう本当にメンタルも身体も弱り切っておられます。こういう状況の人に励ましの言葉を掛けても無意味でしょう。
「うつ病」の患者さんに一番必要なものは休養と適切な薬物治療、そして「ゆっくり生きても大丈夫だよ」と心から思えるような自己肯定感の向上かと思います。
でも…私の場合は単なる「うつ状態」だったので。だからこそ、普通のうつ病の治療とは違うアプローチでセルフコントロールしつつ、現在の回復段階まで自分を高めました。
>「うつ病」と「うつ状態」って全く別物なんですか…
そうです。皆さん殆んどご存じないですけれども、単に医療報酬の都合で「うつ状態」であっても「うつ病」とみなされているのが日本の医療の現状です。
そのあたりも踏まえて、本日は私がどこを意識しつつ「うつ状態」からの脱却を図ったのかをお話しできればと考えています。
>なるほど…まずは心身共に不調になられた背景や経緯をお聞かせください
昨年暮れからでしょうか。公私ともども対人トラブルが続きまくりでした。
相手があることですので詳細は割愛しますが、SNS上で知り合った人物から付きまとい行為を続けられたり、あるいは同じくSNSを使っての嫌がらせを執拗に受け続けたりしました。
>SNSが原因でメンタルが不調を起こす例はよくありますね
これまでメンタルの強さは自負していた私だったんですね。子どもの時から虐待やらイジメやらを経験し、結婚後ももう本当に大変だったので…心が折れないように強く保たなければ生きてはこられなかった。
まあ、余りに強い自分を意識し過ぎてて人としての可愛さとか素直さには欠ける性格にはなりましたがね(苦笑)
>強い性格を自負されていても、SNS上の攻撃には耐えられなかったんですか
ダメでしたね…。絡んでくる相手に真摯に対応すればするほど問題はヒートアップする感じでした。やむなく現在(2018年5月)私のTwitterやFacebookは閉鎖という形が続いています。
>それって別の視点から捉えれば、SNSを止めることである程度心の不安定さは減らせる可能性もあるということでしょうか
その通りです。現在メンタルの不調を自覚されている方は…SNS利用を思い切ってやめてしまえば、かなりの回復は見込めるのかもわかりません。
>思い切ってSNSを止めてみる、ですか…
個人的な攻撃をされていないにせよ、TwitterやFacebook、インスタグラムなど、他人とのマウンティングに繋がる要素が多くて、観続けるだけでも精神的に相当病むだろうと感じます。
LINEにおいては、相手に自身の既読/未読がわかるシステムなもんで、やたらスルーできないという強迫観念がついて回りますし。
>SNSは心に刺激が強すぎるということですね
うまく活用できれば便利なSNSですが、しかし本来の使い方がなされていない場合が多いですよね。
よく言う「SNSデトックス」は大事だと思います。たまにはスマホに一切触れない日を意識的に設けるとかでもいいかも知れませんね。
他人の視線や無責任な自慢に踊らされないよう、自分の心を守る日を置くのは本当に大切だと思います。
>ストレスの軽減方法のひとつとしてSNSデトックスを意識的に行う、若しくは一切のSNSを止めて心を守ることの重要さはわかりました。他に…これがストレスだったなと思われることはおありでしたか?
ちょうど…TwitterやFacebookでトラブっていた頃、交際相手の男性と音信不通になるなど、リアルな人間関係上でも色々困難がありました。
また、仕事関係でもいろいろあったんです。何だかいろいろ重なってつらくなってしまったとしか言えない。
リアルな人間関係のトラブルもまた、相手の顔が見えないSNS上の人間関係とは別のつらさがありますね…。
>SNS上でもリアルな人間関係でも対人トラブルが続いていたんですか
いろんなストレスがあると思いますが、その九割方は人間関係での衝突がベースになってるんじゃないでしょうか。些細なことでも認識の違いからトラブるのが人間関係ですし。
お恥ずかしい話ですが、五十歳の私は対人関係で非常に悩みまして一ヶ月以上不眠に陥りました。それでメンタルの不調に気づいたんですね。
>一ヶ月間の不眠!?
もう…オマエは中学生かよって笑われそうですがね。本当につらくて夜も眠れませんでした。
その頃既にかかりつけの内科で軽い睡眠薬が処方されてはいたんですけど全然効かなくて…。
眠れないまま、それでも普通の顔して仕事を続けていました。そんなある日…寒い時期だってこともよくなかったんでしょうか、私は脳梗塞で倒れてしまいました。
>脳梗塞!
はい。私は子どもの時からてんかんの持病がありまして。てんかんと脳梗塞に相関があるというのは脳神経系の診療科を専門とする医師の間では有名な説らしいんです。
子宮頸がんの治療の際に使用したホルモン剤の副作用で血栓症を患った私は、四十五歳で最初の脳梗塞発作を起こしまして、以来左半身に麻痺が残ったままです。
で…これまでも激しいてんかん発作を起こして、その勢いで脳梗塞を再発することはままあったんですが、今回はまさかの不眠に誘発された脳梗塞発作でした。
>うつ以上にある意味、脳梗塞のほうが病気としてより深刻な印象も受けますが…
そうですね…うつで将来に希望を感じられなくて自傷や自死、ということはあるでしょうが、脳梗塞は処置が悪ければそのまま死に至りますので。
いずれにせよ私は倒れて、近くの救急病院に搬送となりました。入院した病院では年齢的にも介護保険(二号)申請を勧められましたが、五十歳ですし…まだちょっと嫌で。
それで退院後、身体の治療とは別にきちんと精神科でうつの治療を受けるって方向性が決まりました。
>それで…精神科受診となったわけですね
私の受診したクリニックは心療内科メインの治療がなされているところです。
精神科の先生は非常勤でしかお見えになられないのですけど…私は自身の心身の状態から、心療内科的な治療と精神科的なアプローチの両方が必要と思われました。
>一般人には心療内科と精神科の区別がよくわからないのですが
心療内科っていうのは、心の問題が身体に如実に出ている場合の治療を行う診療科です。例えば心が過剰に働き過ぎた結果、神経が興奮し、激しい疲労感の自覚とともに、全身に痛みが生じるなどの症状はよくありますね。
どうしようもない肩こりや腰痛があって、且つ激しい疲労感に苛まれていらっしゃるような場合には、心療内科の受診というのはそれなりの効果が期待できるかと思います。
一方精神科は、いわゆる心の病気を扱う診療科です。
病名的には統合失調症、うつ病、あと日本独自ですけれど、てんかんや発達障害、パーソナリティ障害なども精神科で治療する病気とされています。
しかし昔も今も精神科治療のメインは統合失調症の患者さんが占めています。
>心療内科と精神科の違いが分かった気はしますが、どうも敷居が高いというか、自分の感覚とは違う診療科だというイメージも払拭出来ません
そうでしょうね…。実際に精神科という標榜科では敷居が高いことから、心療内科を標榜する医療機関も少なくはないです。
ただ、心療内科と精神科では本来扱う病気が違います。
また、精神科は他の診療科とは違う診療報酬体系になっています。かつて精神科は非常に長い入院を要する診療科だったので、その名残でしょうか。
精神科については外来診療であっても「精神科専門療養診療報酬」というものをもとに報酬点数が決められているのが特徴です。
>何か難しいお話ですが
とにかく、精神科診療というのは他の診療科とは異なる診療報酬体系なのだという部分だけ理解いただければいいかと思います。
>はぁ…。ここで本題に戻すとして、実際の精神科での治療はいかがでしたか
私は先にも睡眠薬が全く効かなかったというお話をしましたが、同じように抗うつ剤も全く功を奏しませんでした。
抗うつ剤というのは落ち込んだ気分をハイにさせる薬ですから…。むしろ私は抗うつ剤で余計に落ち着かなくなって、ますます不眠に傾いてしまったんですよ。
>薬が効かない…
変なお話になりますが精神科医は抗うつ剤が効くか効かないかで、その患者さんが本当にうつ病かどうかを判断されていらっしゃるんだそうです。
>なんだか診断基準がいい加減な気がしますが
そう思われるかも知れませんが、むしろ、心の病気というのは目には見えない要素が大きいですから、一度の診察で直ちに「うつ病」と診断する精神科医のほうがまずいと思います。
しかしながら…現実には先に挙げた診療報酬の問題も絡んで、
いきなり初診で「うつ病」とされる場合のほうが圧倒的に多いと私の主治医はおっしゃっていました。
>現代はメンタル不調で休職される方も多いんですが、仕事を休むにも診断書提出が必須ですからね
そうです。心身の不調で休職と相成る場合、一番妥当な診断名は「うつ病」です。残念ながらこれが現実です。なので…精神科の初診でいきなり「うつ病」という診断書を求める患者さんは非常に多いんだとか。
それ以外の診断名の診断書を医師が用意したがために窓口で患者と事務職員とがトラブルになって警察が来た、という笑えないケースも一度二度ではなかったそうですよ。
実際、窓口に「不当に書類作成を医師に強要した場合、警察に連絡します」とおどろおどろしい張り紙が掲示されていますもん。
>不当な要求…
さらに変なお話が続きますがかつて私は都内のある福祉事務所に勤務した経験があります。
もう本当にこんなお話を差し上げていいのかどうか悩みますが…。
生活保護申請がなされた場合、申請者に精神科通院歴というのは保護を開始するか否かの判断上とても重要な要素だったりします…。
>何だかこうなるとダイレクトに生き死にに関わる話なんですが
つまりですね。平たくいえば…うつ病だとか統合失調症の履往歴があればほぼ確実に生活保護が決定、開始となされている実態が現場にはあるわけです。悪用されるといけませんので詳細は割愛しますが。
東京二十三区内の福祉事務所においては、精神科が網羅する診断名の有無で生活保護を開始するか否かの判断が下されているとだけ申し上げます。
だからこそ…そのテの診断名が欲しいというケースも、残念ながら少なくはありません。誤解を与える話になりますが…どこにでも残念な方はいらっしゃいます…。
>診断名をつける医師の責任も問われそうですが
先にもお話した通り、医師及び医療機関が診療報酬を得るためには、初診の段階で何かしら病名をつけなければならないわけです。
普通に考えれば初診の段階であれば「うつ病の疑い」だとか「うつ状態」など…そういう曖昧な見立てが当然でしょう。
>病名を付けることで患者の将来が変わることもありますしね
ですが…診療報酬を得る都合上、健康保険組合にはもっともらしい病名をつけた記録(保険診療点数表)を出すしかないですね。でないと薬の処方にも影響が出ます。
もしくは、患者が勤務先を休職するために診断書を要する、あるいは生活保護を申請する際に福祉事務所に提出する書類にも「きちんとした診断名」を医師として記載しなければならない。そういう場合にはまだ病名が疑いの段階であっても「うつ病」と記載するしかないです。
よって…「うつ病」と正式診断された、単にメランコリック(憂鬱)な気分なだけの人がいっぱい生み出されていくわけです。
憂鬱な気分だけの、病人とはいえない人でも、診断名がついた以上「うつ病」の患者です。
>メランコリック…憂鬱な気分の人ってことですか
そうです。
うつ病とうつ状態は全く違うのだと最初にお話ししましたね。気分が落ち込む状況というのはいろいろありますね。
受験の失敗、仕事のミス、失恋や離婚、大切な人との別離…
そういうことがあれば誰でもメランコリックになりますね。これが「うつ状態」です。
わかりやすく言い換えればうつ状態というのは「原因がはっきりわかっている落ち込み」です。
>なるほど。それではうつ病の定義ってなんでしょうか
端的にいえば「特に思い当たる原因がないのに二週間ないしは三週間に亘る気分の落ち込みがあり、憂鬱な気分によって日常生活に著しく支障をきたしている状態」です。
原因がはっきりしない気分の落ち込みが一定期間続けば、真にうつ病を疑うべきでしょう。
それこそうつ病の人は普通に考えてうれしいような出来事であっても、強いストレスを感じて心身のバランスを保てなくなりますからね。
また。本当に「うつ病」である患者さんには抗うつ剤が劇的に効きます。
>もう少しうつ病について詳しくお聞かせ願えますか
正確に申し上げればこれまで一般的に「うつ病」とされてきた気分障害については、2013年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)の最新の診断基準上において、双極性障害(そううつ病)とはっきり区別するため、これまでのうつ病という診断名から「大うつ病性障害」という診断名に分類されるようになりました。
※厚労省の発表しているテキストが一番信憑性がありそうなのでご紹介します。下がそのリンクです。
「うつ病」
>抗うつ剤が効かない落ち込みというのもあるんですか?
あります。実際に「単なる気分の落ち込み」でしかない私には、抗うつ剤は全く効きませんでした。むしろハイテンションになって余計に調子を崩しました。
わかりやすくいえば、抗うつ剤は気分をハイにさせる麻薬みたいな成分ですからね。だからこそ、本当に「うつ病」の患者さんであれば、抗うつ剤の効果によって気分が少しずつ上向きになります。
いっぽう、落ち込んだ原因がはっきりしている「うつ状態」の人には長期間(現在の指針で二週間以上)の抗うつ剤の過剰な処方は、むしろ筋弛緩などの重篤な副作用が出る可能性が高いので危険です。
>だからこそ「抗うつ剤が効くか効かないかで本当にうつ病なのかどうか見極める」って話が成り立つんですね
その通りです。
しかしながら殆んどの精神科では、単なる気分の落ち込みが主訴の患者に対し「抗うつ剤が効かないよね」と、さらに多くの薬剤を患者へ多剤処方している現実があります。
本来「うつ病」ではない患者に対する抗うつ剤の多剤処方が医療費の増加に繋がって、ただでも逼迫した保険財源をさらに圧迫する一因となっています。
当然ですが…水面下では本来「うつ病」ではない患者に、さらに多くの抗うつ剤を処方することによる副作用などの医療事故も多く起こっています。
>何だか穏やかではありませんが…
先にご紹介した『DSM-5』(『精神疾患の診断・ 統計マニュアル』第5版)に基づいて診断するなら、例えば「家族の死」による(一過性の激しい)気分の落ち込みであっても、落ち込む原因がはっきりわかっていながら、未だに「うつ病」だと診断することは可能です。
なぜなら、気分の落ち込みが続く状態について『DSM-5』には落ち込む原因の有無を明確には問うていないという、うつ病の診断基準としての致命的な欠陥があるからです。
>落ち込む原因の有無でうつ病かどうか医師は判断しているはずなのに、診断の基本となるべきマニュアル自体がそこの部分をはっきりさせていないというわけですね
私の主治医に伺ったところ精神科医としての経験を積めば、繰り返し数回診察するうち患者が本当にうつ病なのか、それとも単純に何かしらの原因で落ち込んでいるうつ状態の患者なのかわかるんだそうです。
ここまで突っ込んで申し上げていいのかわかりませんが、単にうつ状態なだけであって「うつ病」とはいえない患者には抗うつ剤の投与を中止、若しくは少しずつ減薬の方向に持っていける医師は本当にいいお医者さんでしょう。
ただ…精神科医療の現場にはそのような判断が出来る医師がまだ少ないというのも事実なようです。
また、麻薬に近い成分である向精神薬にはかなりの習慣性があり、患者自身も一旦服用し始めたら減薬するには相当の苦しみがあります。
>うつ病とうつ状態との違い、そこから派生する様々な問題が多少は理解できました。ここからは、実際にうつから抜け出した体験などをお聞かせ願いたいのですが
私の場合は、原因がはっきりした「うつ状態」でした。
SNSトラブルやリアルな人間関係での対人トラブル、そして脳梗塞の再燃による体調不良が気分が落ち込んだ原因です。
>原因がはっきりしている以上、取り除けばいいのですね
おっしゃる通りです。まず自身のSNSについては全て一旦閉鎖しました。それだけでもかなりの不安がなくなりました。
仕事上のアカウントでしたが、関係者には早い時期での再開を求められてはいますが、自分の心の安定のほうがずっと大事ですので、現状blog以外は未だに再開のめどが立っていません。
>実際の人間関係についてはどのように折り合いをつけられたんでしょうか?
リアルな人間関係についても、「心を乱すだけなら今の自分には必要ない人物なのだ」と割り切って、距離を置くことにしました。
単に自分の心を乱すだけの人物なら友達も恋人も家族も要らない、自分が一番。そのくらいに割り切って大丈夫です。
なんにせよ、心を守るためには「割り切ること」が大切です。
うつ状態になる人は基本真面目な方が多い気がするので、一番大事なものは自分自身だという考え方を養うことが心の回復への鍵のように自身の体験から思っています。
自分の心と身体を守るために割り切る。割り切れる考え方の「癖」を自ら意識して培うとでも言えばいいでしょうか。
>「割り切る」んですか?
基本うつ状態になる人は、私も含めて割り切ることが苦手なようです。割り切るという考え方の癖が身に着いていません。
他の人の痛み苦しみまで慮って(おもんぱかって)、結果的に自分も苦しんでしまいます。一見、優しい人に見えそうで好ましい性格かも知れませんが…。
でも…気分が下がって落ち込んでいる時にはそこまでの考えも及ばないのが現実です。だからこそ「自分が一番」とおまじないみたく唱えましたね、私の場合。
>おまじない、ですか…
ほかにもいろんな「おまじない」をやりましたね…。ばかげているかも知れませんが、自分にいい暗示をかけるための手段として、おまじないはとても効果的でした。
考え方の癖を変えるために「自分が一番」と呟くほか。
個人的に効果的だったのはお風呂に入るおまじないです。
>お風呂…?
昼間、しっかりバスルームを掃除し、バスタブにたっぷりめのお湯を張ります。
多めのお湯に好きな入浴剤を入れてゆっくり入浴しつつ「私のつらいことやイヤなことは今洗い流されている」と繰り返し唱えました。声に出して唱えることが重要です。お風呂に浸かることで身体のこわばりも解れてさらにいい感じでした。
明るい時間帯の入浴後は、私の大好きなアールグレイをアイスで飲むと、もうそれだけですごく贅沢な気分に浸れて…次第に悩み自体どうでもよくなりましたね。
>脳梗塞は結局どのように対応されたんですか
数日入院して点滴などの処置を受けたあと自宅に帰宅しました…帰宅直後はさっきお話したお風呂どころか、シャワーも自分では浴びれませんでしたが。
元々バリアフリー設計の自宅に住んでいたことは不幸中の幸いでした。バリアフリーということで、片麻痺のままでもゆっくり家事は再開できました。その点は本当にラッキーだった。
ゆっくりゆっくり動くことを念頭に、家事の全てを自分で行いました。性格的なものも大きいのでしょうけど、私はリハビリだと思えば何でもがんばることができました。
>それでも不自由なことはおありだったでしょう
そうですね。うまくいかないこともやはりあったかな…。この際…いい機会だと思ってこれまでの生活パターンを見直しました。体調が芳しくないのですから、仕事もセーブし、夜は必ず眠るようにしました。
さっきお話した通り、睡眠薬は効かない体質ですので、脳梗塞ほか身体系の一般科から出されている薬を、夜をメインに服用する処方を医師と相談しました。
精神科では一切のお薬は処方されませんでした。てんかんですので…一日二回のデパゲンだけは例外的に出されましたが、それだけです。
デパゲンも…調子が悪かった時期は夜にまとめて服用する形にしました。デパゲンを服めば眠たくなりましたね、他のお薬もいっぱい服んでましたから。
>お薬の力は借りなかったんですか?
私の場合はあくまで「うつ状態」なわけですからお薬よりも気分が落ち込む原因を取り除く方が先だと思ったんですね。
当然ですが、原因もなく気分的な不調が続く「本当に」うつ病の方については休養とともに、適切な薬物治療を主治医と相談されつつ進めていただきたいと思います。
しかしながらあからさまに原因があって落ち込まれる方については幾らお薬を服用しても、ご自身を憂鬱にさせるような根本的な問題が解決されていない限り、気分の落ち込みは決してよくはならないと思います。
>根本的な問題の解決ですか…
例えば、気分を落ち込ませるものから逃げる、という考え方はアリです。イヤな事柄や自分を苦しめるだけの場所や人からは離れても生きてはいけます。それくらいに考えられればすでにかなりの心の回復が図れた段階でしょうけれど。
>よく「うつの時は重要な判断は避けたほうがいい」といいますが
それはその通りです。学校や会社はできれば気分が落ち着いてからでも進退を決められるように判断を先延ばしに出来るのであれば極力先送りにしましょう。
ただ、一方でうつ状態の時こそ生きているからこそなんぼ、くらいの緩い考え方を養うためのいい機会だと思うのもアリかもしれません。
私自身は…今回のうつ状態の間に久々のリストカッティングをやらかしました。麻痺している左手首をカッターで切ったんですが…。何だか、死にたいのか生きたいのかもわからなかったかな…。
ヘンな話ですが、手首を切って流れる赤い血を目の当たりにしつつ「あたし、生きてるんだ」とまさしく他人事のように受け止める私がいましたね。
当時はそのくらい壊れていました。
>リストカットするほど追い込まれてしまったんですか…
それで思ったんですが、この世に(自分が)壊れ果てることと引き換えるほどの仕事もなければ学歴もないでしょう。
他人が羨むような学歴。輝かしい資格や経歴。イケメンで優しい彼氏や旦那…。そんなものを死んであの世に持ち込んでも一切の意味を為しません。
まあ…リスカ自体では死ぬことはありませんが、自ら手首を切る毎に私は心を殺しているともいえるので、そんなことをしてしまうくらいに苦しいのであれば、もう一切を手放してもいい。生きていてなんぼです、死んだらそれまでです。
今でも自分の手首に残る傷の縫合の痕に、私はもっと自分を大切にしようと毎回呟いています。
大事な自分と引き換えるほどの名誉なんて一切ないです。自分が一番です。
>自分が一番…ほかに自己肯定力を上げるおまじないとかありますか?
おまじないかどうかわかりませんが…。
私を応援?してくれている男友達一同に協力を願って、日々「○○ちゃんカワイイ」「○○ちゃんキレイだ」「○○ちゃんって素敵だ」などしつこいくらいにメールさせました(笑)
実際、これも自己を肯定するために予想以上の効果がありましたね…。
女性同士だと下手すれば妙なマウンティングに巻き込まれるかも知れないので相手のセレクトは重要だと思いますが…。
>かなりユニークなおまじないですね…(笑)
私は男性の友人知人にしか最初から依頼しなかったのでアレですが…。おそらく、異性のほうが下らないとかいいつつも、まあいっか、くらいのノリで快く引き受けてくれる可能性は高いです、多分。
とにかく自分を好意的に受け止めている他者からの言葉を毎日浴びていれば自ずと自身でも「私は大切な存在なんだ」という思い込みがなされていきます。
ナルシストっぽくてバカみたいかもしれませんが…言葉の力は本当にすごいので騙されたと思って試される価値はあると思います。
>これでポジティブシンキングになれたのですね
実際には不眠で眠れないことも多く、さっきお話したようにリスカをやらかして本当にダメダメでした。
でも「ダメでもいいや、ダメな自分を大事にしよう」と日々自分に言い聞かせて生活し続けました。
どうしてもダメな時はパソコンをシャットダウンし、携帯電話など音のするものも全てオフ。照明は落とし、カーテンを閉じて、刺激を少なくして寝ました。
しんどい時には昼間であろうと刺激を減らして寝るということに徹しました。寝る時は服のまま寝るのではなく、きちんとパジャマに着替えて休みます。本気で寝るのです。
>最終的には睡眠ですか…
どんな病気にしても睡眠というのはかなりの効果をもたらすのではないでしょうか。
わんわん泣き続けて手首を切っていた私も睡眠を充分取ることに徹して、乱れまくっていた考えもまとまり、次第に心が落ち着きましたから。
いい睡眠を確保したいので…思い切って寝具や寝間着も買い替えました。ベッドカバーも好みのものに変えて気分の安定を図りました。
これもとっても効果ありましたね…。
気分が落ち込んでいる期間は必然的に殆んど寝て過ごすわけですから寝具や寝間着を快適に保つのは気持ちよく寝るためにかなり意味があるようです。
そこまでお金が足りないということであれば、シーツを頻繁に洗って交換するとかお布団をこまめに干すだけでも効果あるのではないかと思います。
>うつ状態になると出費が嵩むんですね…
病気してるんですからね、やむを得ないです。確かに出費が嵩むこと自体ストレスに繋がるのですけど、それは自分に必要経費を投じているのだと思うしかないです。大事な自分にそれなりのお金がかかるのは仕方ないよねと。
もしもうつ状態で入院する場合、平均でひと月10万円超の自己負担が発生します。先にも触れましたが、精神科は診療報酬体系が一般科と異なるため、予想以上に高額な入院費を要することが多くあります。
気分の浮き沈みが尋常ではなく、本当に不穏な病状で自殺に走りそうな場合には、高額な入院費も「やむを得ない出費」でしょう。
しかし、自宅で療養するほうが最終的には安いとも言えるでしょうね。多少無駄遣いに思える出費が嵩んだとしても、です。
>そうですか…このお話もそろそろまとめの時間となりましたが、まずは現在のご様子などお聞かせください
本当のことを申し上げれば、今も完全に回復したとはいえません。仕事に集中出来る時間も以前に比べてぐっと減りましたし…。疲れたらとにかく横になって休んでいます。
現在、食欲は少し戻ってきました。本当につらかった頃は食べものの味が全くわからなくて苦痛ですらありました。それを考えれば今は少し症状が軽快しつつあるのかもです。
食べるのが億劫な時も未だにありますが。多少気分のいい時に私はきんぴらやひじきの煮物や切り干し大根の煮つけ、ほか南蛮漬けなどの常備菜を作り置きしていまして…。
食べるのがつらくても面倒でも、冷蔵庫に入っているそれらのおかずでやり過ごします。
ごはんも気分がいい時に多量に炊いて、一回分ごとに分けてフリージングしています。本当につらい時のためにお粥も用意してあります。
>毎日のことですし、食事は大切ですからね…他の面ではいかがでしょう
繰り返しになりますが、睡眠時間はしっかり確保しています。睡眠が一番のお薬であり、気分を下がることのないよう保つための秘訣です。
先にお話したおまじないその他は今も継続しています。
考え方の癖を変える、自己肯定力を上げるということが気分をよい状態のまま保つには本当に大切な気がします。
誤解のないように申し上げますが、無理してポジティブに保つことはないです。ポジティブさというよりは「私はダメでもいいんじゃん」と、正しい意味合いで開き直れる心のしなやかさを身に着けられるのかどうかです。
そのために「自分が一番」と今でも毎日自分に暗示をかけています。自己中でも別にいいじゃないですか。自分が大事ではない人物がどれだけ他人を大切にできるのか。考えれば答えは明白です。
>いい意味で自己中になるという部分にうつ状態から抜け出せるためのヒントがあるように思えます。最後になりますが、お薬を使わないうつの治療というのは本当に可能だったんですか?
私自身は今回、一切の抗うつ剤を服用せずに気分の落ち込みを乗り切れましたがこの辺りについては…実際のところ主治医の考え方がかなり反映する部分だろうと思います。
あなたらしい療養に徹するために納得いかない治療を医師が勧めてきた場合、NOといえるあなたであってほしい。あなたの心や体のことは、医者以上にあなた自身が知っているという基本を忘れないでいただきたい。納得いかない治療を勧められた場合には徹底的に医者と話し合う勇気を持っていただきたい。
その話し合いにすら真摯に応じない医者であれば、どんな名医であろうと今後の治療がうまくいかなくなります。躊躇わず紹介状だけ書いてもらって転院しましょう。
あなた自身の心や体はあなたのもの。医者という他人に安易に投げないでいただきたい、いつか後悔します。
>本当に迫る言葉ですね…
ごめんなさい、話が逸れましたね。
うつ状態は「うつ病」とは違うということを理解していながらもいわゆるうつ病ではない患者に対しても「オトナの事情」で延々抗うつ剤を出す精神科医のほうが、今でもきっと圧倒的多数であろうことは否定できません。
また、精神科という診療科の特徴として患者さんが精神科医の機嫌をびくびくと窺っている傾向が強い印象があります。
抗うつ剤に留まらず精神科の薬はひどい依存症状が生じます。実際「○○先生を怒らせるとお薬を出してもらえない」という患者さんの台詞は精神科病棟でよく飛び交っています。
お薬を止めると離脱症状で余計に苦しむことになるので、主治医にきちんと投薬してもらえるかどうかとても心配になるのが精神科の患者さんの特徴のひとつだといえるでしょう。
>離脱症状が苦しいから精神科医の機嫌を伺い、さらなる薬を求める患者さん…
「うつ病」の場合、たいていは自宅療養になりますが実際に外来治療メインであってもお薬欲しさに精神科医の機嫌を伺う素振りの患者さんには、私もよくお会いしました。
そういう精神科独特の療養環境のなか「先生、もっとお薬ください」という患者と上から目線態度で麻薬と同じ成分の抗うつ剤を重複処方している精神科医との間に言葉では説明出来ませんが妙なパワーバランスが働いている気がしますね。
>妙なパワーバランス…
だからこそ。今回のうつ状態の治療に当たっては私は精神科医と心療内科医の両方から診察を受けました。
患者である私と精神科医との間に妙なパワーバランスが形成されるより医者同士の間で治療上のフラットな意見交換がなされたほうがいいかと思ったのです。
>実際には医療に何を求められていたのでしょう?
精神科医とは現状の自分の抱える問題点を解決する方法というのをディスカッションしつつ考えました。
自身の問題を真正面から考えるヒントを頂くために診察を受けました。
てんかん発作を抑えるためのデパゲンだけは精神科医に処方いただきましたがうつ状態を改善するための処方は一切受けませんでした。
主治医は私と同世代の女医です。「あなたはうつ病ではなくうつ状態だ」と繰り返し指摘される先生のことを、私は心から信頼しました。
一方、心療内科医にはうつ状態から派生する身体の痛みを緩和する治療を受けました。精神科医と心療内科医は私のカルテを常に共有して頂き、私にとって一番必要な治療を考えていただきました。
>治療の効果はいかがですか?
うつの症状が顕著になってから、治療を開始して半年が経ちました。今、私はようやく他人と会うのが億劫ではならなくなりつつあります。
気分の落ち込みがひどく、病状が芳しくなかった頃、私はこれまでの全てをシャッフルしたくて殆んど衝動的に自身が所属していたある雑誌の編集部を辞めました。
しかし、過日編集長から「だいぶん調子も回復したようだし…また頑張ってみないか」とお声がけいただきました。私は完全に辞めた形だったにも拘らず、元の編集部のデスクに戻ることとなりました。
また本調子ではありませんので、当面の間は在宅によるリモートワーク。それでも前と同じポジションに戻れまして…感謝しています。
>今思われていらっしゃることは?
これからも自分を粗末にする考え方を改めてどんな時も「自分が一番」と…正しい意味での自己中に徹しよう。そう思います。
自分を大切にしていると、例えば今般の前職復帰のようにいいことも舞い込んでくるような、そんな気がしています。
今後の目標としては、自分のなかの怒りやネガティブな感情をうまくコントロールする術を身に着けたいということ…ですかね。
それについては現在、いい方法を見つけるべく試行錯誤中の私です。効果的なアイディアを思いついたらまたお話させてくださいね。
>ありがとうございました
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