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抗精神病薬の副作用で横紋筋融解症と悪性症候群になった男性

 

この記事は30代の看護師さんに書いていただきました。

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ある朝、私が勤める病院に統合失調症の患者さん(23才男性)が入院してきました。1か月ほどの入院措置で治療を終えて、退院していきました。退院してからは通院しながら働いていて、内服もできている状況が続いて、一見順調に見えていました。

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次第に症状が悪化

しかし、次第に独語(独り言)が持続し、被害的な妄想や幻聴が強く現れ、仕事ができない状況に陥りました。同居していた家族に対しても暴力行為があり対応に苦慮していたようでした。家族では対応が困難となり、拒否する本人を半ば無理矢理、精神科病院外来に連れてきたのでした。

外来では精神興奮が著しく大声を出し続けており、自傷・他害の可能性も高く、診察の結果、医療保護入院し、隔離室へ入室することとなりました。隔離になっても、患者さんの興奮は収まらずスタッフに対し威嚇するような状況があり、指示にてセレネース(興奮を抑える)とアキネトン(体が固くなるのを改善)の筋肉注射が実施されました。

昼過ぎにも再度セレネースが筋肉注射されました。注射後しばらくして、鎮静がかかりぐっすりと寝始めました。覚醒後にスタッフが関わることで、拒否的だった内服に応じてもらえるようになり、入院当日夕方から抗精神病薬が開始されるとになりました。定型薬(レボメプロマジンやベゲタミン・コントミンなど)が処方されました。また定型薬と同時に抗不安薬(デパス)や睡眠導入薬も同時に処方されました。

翌日も内服は拒否なく行え、興奮も持続することなくスタッフの声かけにも耳を傾けれることができるようになってきました。

抗精神病薬などによる副作用が現れる

入院3日後から、急に40度の発熱がみられるようになり、両手の震えが強くみられ始めました。それと同時に多量の発汗があり、風邪による悪寒のようにもみられる状況でもありました。

抗生剤の点滴が開始されましたが、高熱は持続し次第に食事も入らないようになり、頻脈・嚥下障害や意識障害も出てきました。目もうつろになり、筋肉も萎縮し到底立ち上がることのできない状況です。

全身状態の管理のためバルーン(尿道カテーテル)が留置され、尿の色も淡黄色から急に赤褐色に変化していき、明らかに全身状態が悪化していきました。

ドクターより採血の指示を受け検査を行ったところ、CPK(筋肉細胞に多く含まれる酵素)が10000を超えており、症状からも横紋筋融解症、悪性症候群と診断されました(通常、CPKは男性の場合、最大250)。

横紋筋融解症は文字通り横紋筋という筋肉が融解する症状ですが、尿の色が赤褐色に変わっていきます。悪性症候群は高い熱が出たり、意識が混濁する症状が出ます。横紋筋融解症も悪性症候群も抗精神病薬の副作用として典型的な症状です。

抗精神病薬の中止が指示され、全身状態の管理を同時に行っていくことになりました。ダントリウムの点滴が開始され、1週間後には食事も開始され、約2週間で患者さんは回復に至りました。

今回の原因は抗精神病薬の多量投与です。精神科領域では精神病薬の量を示すCP換算という指標があります。その患者さんはCP換算が1200mg以上ありました。昔は、1000mg以上ある患者さんが珍しくありませんでしたが、最近は抗精神病薬は単剤化されており、定型薬から非定型薬へ薬も新しくなってきています。

しかし、非定型薬も多量に内服すると副作用は出てくるのです。現在でもまだ単剤化できていない精神科病院は多いと聞きます。副作用で苦しむ患者さんが少なくなるように願います

[参考記事]
「抗精神病薬エビリファイの副作用でじっと座っているのが困難に」

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