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乳がん体験記 森さん編⑤RIとCTの検査が始まる

 

この記事は「乳がん体験記 森さん編④針生検で17ミリの悪性の癌と判明」の続きです。

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乳がんの宣告から3日後。検査のために私は、再び病院にいました。この日は、RI(シンチグラフィー)とCTの検査です。

午前中に一度、検査に必要な注射をするために病院へ行き、午後2時からRI検査です。注射は、放射性医薬品です。体内にこれを注射し、数時間経ったところで、体内から発せられる微量の放射線をカメラで撮影するというものです(つまり、癌に集まった放射性物質を撮影して位置を確かめるために行われます)。

ベッドに横になった後、ベッドが移動して機械の中へ入っていき、撮影になります。検査時間自体は15~20分くらいでしょうか。

この検査(RI(シンチグラフィー))は、患者さんにラジオアイソトープで標識した、つまり“目印”をつけた「放射性医薬品」を投与することから始まります。
しばらくして、投与された放射性医薬品が目的とする臓器や組織に集まったところを、ガンマ線を検出するガンマカメラで体外から撮影します。

撮影された画像(シンチグラムといいます)からは、体内臓器の位置・形状・サイズの情報が得られます。
重要なのは臓器の血流と、機能(働き)についての情報で、他の臨床検査ではわからない貴重なデータになります。

国立循環器病研究センターより引用

その後は、CT検査が入っていました。CTでは、注射はないだろうと思っていたら、造影剤を注射されました。担当の看護師さんは、午前中に注射をしてくれた方と同じでした。とてもあたたかな感じの年配の女性で「お母さん」と呼びたくなるような人でした。

注射をするわずかな時間の間にも、優しい言葉をかけてくれるのです。「何年目ですか?」と聞かれ、意味が分からずにいましたが、乳がんの手術をした後、何年かは同じ検査をするのだということを理解しました。

私が初めてで、これから手術をするということを察してくれたのか、その人は、「夜になると、泣けてきちゃいますよね」と、言ってくれました。それが義務的でも、他人事のようでもなく、本当に、見ず知らずの患者に寄り添ってくれている感じで、嬉しかったのを覚えています。

彼女が言うように夜になると泣いてしまうほど私は弱っていませんでしたが、そう言われて初めて、私は強いのではない、弱っていることに気づいていなかっただけだと思いました。そうかあ……普通は、夜になると泣けちゃうものなんだ。……泣いても、いいんだ。妙に、納得してしまいました。

さて、注射した造影剤の影響で、検査中に体が熱くなってきます。そのような説明が事前にありましたので、そういうものなのだと思っていましたが、顔の一部だけ特に熱い部分があり、それがなかなか消えませんでした。

検査室から出て、待合室にいる時、その看護師さんが気づいてくれました。私の顔の熱い部分が、発疹になっていたのです。言われて触ってみると、確かに膨らんでいましたし、目の下なので、違和感もありました。副作用が出てしまったのです。看護師さんが、私を椅子に座らせると、すぐに先生に連絡を入れてくれました。それから、乳腺外科へ行くように言われました。

検査着から、着てきた服に着替えて待合室を出ようとすると、看護師さんが言いました。

「がんばりましょうね」

それは、上から目線ではなく、同じ目線で、心から同情してくれているようでした。

「はい!」

元気よく答えてから看護師さんをよく見ると、看護師さんの手は、手の甲から手首にかけて、ケロイドのようになっていました。けがをした経験が人の痛みがわかる優しさを生み出しているのかな、と感じました。

乳腺外科へ行くと、担当医は不在だったため、別の先生が診てくれました。発疹はすぐに消えるだろうとのこと。念のため、3日分の薬が処方されました。すぐに消えるなら、薬はいらないと思ったのですが……検査や手術でこれからたくさん薬を使うかと思うと、少しでも他の薬は使用したくなかったのです。もともと、あまり薬は使わない主義でしたから。

でも、病人になってしまっては、そうも言っていられません。

病人?

私は、病人なのか。目に見える症状も、痛みも何もなく、いたって、元気なのに。ただ、胸にしこりがあるというだけで。不思議な感じでした。

この日、たまたま休みだった夫が、娘のバス停車場までの送り迎えをやってくれました。夫は子育てが苦手なので、ちょっと心配していましたが、案外大丈夫なものなんだな、と安心しました。もう少し、夫を、娘を、信じよう。そして、私は、病気を治そう。

続きは「乳がん体験記 森さん編⑥MRIで3つ目のしこりが見つかる」

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