なぜオリーブオイルに偽物が多いのか?背景を探る
オリーブオイルは地中海食の中心的存在として知られ、健康志向の高まりとともに日本でも人気が高まっています。しかし、消費者が「エキストラバージンオリーブオイル(EVOO)」として購入している商品の中には、実際には偽物や品質の低いものが含まれているケースが少なくありません。
2010年、米カリフォルニア大学デービス校が発表した調査では、アメリカで販売されている輸入オリーブオイルのうち、69%が国際オリーブ協会(IOC)の定める「エキストラバージン」の基準を満たしていないと報告されています(参考:UC Davis Olive Center)。
このような偽物が多い背景には、以下の要因があります:
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エキストラバージンオリーブオイルの定義が曖昧である
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化学的・感覚的テストが不十分なまま販売されている
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産地偽装や混合油が横行している
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消費者が本物を見分ける知識を持っていない
科学的エビデンスが示す偽装オリーブオイルの実態
科学的検査を行うことで、オリーブオイルの品質や偽装の有無を客観的に判断できます。実際に世界各国の研究機関が、偽物オリーブオイルに関するデータを発表しています。
例として、以下のようなエビデンスがあります:
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ドイツの食品安全機関は、スーパーで販売されていたEVOO商品の30%以上が安価な精製油と混合されていたと発表(2017年)。
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イタリアでは2014年に大規模な摘発があり、有名ブランド数社が「純正」と表記したオイルに、安価なサンフラワー油を混ぜていたことが明らかに。
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アメリカFDA(食品医薬品局)は、国際貿易におけるオリーブオイル偽装が「食品詐欺」の代表例の一つであると位置づけている。
これらのデータは、「見た目」「香り」「味」だけではオリーブオイルの品質を判断できないことを示唆しています。つまり、ラベルだけを信じて購入するのは非常に危険なのです。
偽物オリーブオイルの健康リスクとは?
「偽物」とはいえ、植物油である以上、即座に健康被害が出るわけではありません。ただし、本来得られるはずの健康効果が得られないという点では、大きな問題です。
エキストラバージンオリーブオイルに期待される主な健康効果には以下があります:
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ポリフェノールによる抗酸化作用
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オレイン酸による血中脂質改善
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抗炎症作用による生活習慣病予防
偽装品は、精製された安価な油を混ぜていることが多く、これらの有効成分が含まれていない場合があります。つまり、健康目的でオリーブオイルを取り入れている人ほど、偽物を摂取してしまうことによる「機会損失」が深刻なのです。
また、一部の偽装品には酸化が進んだ油や、保管状況が悪いオイルが使われていることがあり、これが慢性的な腸の炎症やアレルギー反応を引き起こすリスクも否定できません。
信頼できるオリーブオイルを見極める5つのポイント
では、どのようにして本物のオリーブオイルを選べばよいのでしょうか?以下の5つのポイントを意識することで、偽装品を避ける確率を高めることができます。
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原産国の明記があるか(「イタリア製」だけでなく、収穫地や圧搾地が書かれているか)
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収穫年または搾油日が明記されているか(賞味期限だけでは不十分)
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遮光性のある瓶に入っているか(透明ボトルは酸化のリスクが高い)
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信頼できる認証マークがあるか(例:IOC認証、DOPマークなど)
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香りと味に「若草」や「苦み・辛み」が感じられるか(劣化していない証拠)
また、日本国内でもオリーブオイルの官能検査を通過した商品に「JASマーク(特級)」などが表示されることがありますが、これもあくまで目安の一つにすぎません。購入時には、できるだけ生産者の顔が見える商品や、小規模ながら信頼できる直輸入ショップを選ぶと良いでしょう。
まとめ:健康のためのオリーブオイルが逆効果にならないために
「本物のエキストラバージンオリーブオイルを手に入れることは、いまや宝探しのようなもの」と言われることもあるほど、偽物の流通は深刻な問題です。しかし、正しい知識を持って選ぶことで、私たち消費者も偽装を見抜くことができます。
健康のために取り入れているオリーブオイルが、実は安価なサラダ油に過ぎなかった…。そんな悲劇を避けるためにも、情報に敏感であることが何よりの「健康対策」といえるのではないでしょうか。
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