便秘の人は口臭がきつくなる。エビデンスを示します

便秘と口臭の関係について、医学的な観点から詳しく説明します。便秘が原因で口臭が悪化する理由には、生理学的なメカニズムがいくつか存在します。

1. 便秘と腸内フローラ

便秘が続くと、腸内での消化不良やガスの蓄積が生じます。腸内には数十兆もの細菌が存在し、その多くが腸内での消化活動に関与しています。腸内フローラのバランスが乱れると、有害な細菌が増殖し、その結果、ガスや悪臭を発生させる物質が生成されることがあります。これらの物質が腸内から血液を通じて体内に吸収され、最終的には肺に送られて呼気として排出されることが、口臭の原因となります。

特に、腸内での発酵や腐敗が進行すると、メタンや硫化水素などのガスが発生します。これらのガスは口臭の元となりやすく、便秘が慢性的であるほど、これらのガスが体内に滞留し、呼気に現れることが多くなります。

2. 腸内細菌と硫黄化合物

便秘が腸内フローラに与える影響の一つは、有害な細菌が腸内で増加することです。特に硫黄を含む化合物（硫化水素など）は、腸内細菌が食物を発酵させる際に生成されます。これらの化合物は、悪臭を伴うものとしてよく知られており、便秘によって腸内の滞留時間が長くなると、その分悪臭を引き起こす物質が増加します。

硫黄化合物は、腸内で血液に吸収され、その後肝臓で処理されますが、肝臓での処理が追いつかない場合、その成分が再度肺を通じて呼気に含まれることとなり、口臭が強くなる原因となります。

3. 消化不良と口腔内細菌の増殖

便秘が続くと、消化が不完全になることがあります。この場合、腸内で未消化の食物が発酵し、ガスや悪臭を発生させる原因となります。未消化の食物が腸内に長時間滞留することにより、腸内で有害な細菌が増殖し、その影響で腸内フローラが乱れることが知られています。これにより、腸内で発生した有害物質が血液を通じて体内を巡り、最終的に呼吸とともに口腔に現れるのです。

また、便秘の影響で腸内で腸内ガスが滞留することが、腸内からの異常なガス放出（おならや口臭）を引き起こす原因となります。これにより、口腔内の細菌も影響を受けることがあり、口臭が悪化する要因になります。

4. 口腔内の乾燥と便秘

便秘の症状として、消化器官全体の働きが低下することが挙げられます。消化器官の働きが悪くなると、唾液の分泌量も減少することがあります。唾液は口腔内を清潔に保つ重要な役割を果たしており、唾液の減少によって口腔内の細菌が増殖しやすくなります。この細菌の増殖が口臭の原因となることがあります。

口腔内の乾燥（ドライマウス）は、便秘の間接的な影響としてよく見られる症状です。乾燥した口腔内では、口臭を引き起こす細菌が増殖しやすくなります。また、唾液は消化の始まりでもあり、口腔内での消化活動が低下すると、口腔内の不快な臭いを引き起こすことがあるため、便秘と口臭は密接に関連しています。

5. 便秘による腸内毒素の蓄積

便秘が慢性化すると、腸内で有害な毒素が長時間滞留することになります。これらの毒素が血液に吸収され、体内に拡散することで、様々な身体的な不調を引き起こします。毒素の一部は肺を通じて呼吸に現れることがあり、結果として口臭が悪化することがあります。腸内で発生したアンモニアやアミン類、揮発性有機化合物（VOCs）などが血流を通じて体内に広がり、これらが口臭の原因となります。

特に、腸内に滞留する食物が腐敗し、悪臭を発する物質が生成されることが、便秘による口臭のメカニズムにおいて重要な要因となります。

6. 便秘と腸内免疫系

便秘が腸内フローラに与える影響は、腸内の免疫機能にも関係しています。腸内免疫系は、腸内での有害物質や病原菌の発生を防ぐ重要な役割を果たしています。便秘が腸内フローラを乱すことで、腸内の免疫機能が低下し、これにより腸内で有害な細菌が増殖することがあります。この細菌が生成するガスや毒素が口臭の原因となります。

腸内フローラと免疫系の関係は非常に重要であり、腸内環境が悪化することが、体全体に悪影響を及ぼすことがあります。その結果、口臭が強くなるという現象が起こるのです。

7. 便秘とストレス

便秘の原因として、精神的なストレスや不安が挙げられることがあります。ストレスが溜まると、腸内の自律神経にも影響を与え、腸の動きが鈍くなります。ストレスによる腸内の血流の変化や消化不良は、便秘を悪化させ、腸内フローラを乱す原因となります。

また、ストレスが続くと、腸内での有害物質やガスが増加し、これが血流を通じて口腔に現れることがあります。ストレスによって便秘が慢性化すると、口臭も強くなりやすいという悪循環が生じます。

結論

便秘が原因で口臭が悪化するのは、腸内フローラの乱れ、消化不良、腸内毒素の蓄積、免疫機能の低下、乾燥など、いくつかの生理的メカニズムが絡み合っているためです。便秘による腸内環境の悪化が口腔内の臭いを引き起こし、最終的には口臭が強くなることがあります。このため、便秘の改善は口臭を予防するためにも重要です。