この記事は乳がんの化学療法としてAC療法と3週間毎ドセタキセルを投与した50代後半の女性に書いていただきました。
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針生検で右胸のしこりが湿潤性乳管がんと診断された時、腫瘍の大きさは5cm未満、リンパ節転移あり、遠隔転移なし、ホルモンレセプター陽性、HER-2陰性、癌細胞の増殖能5%未満で、ステージⅡBでした。
この結果から、手術前に術前療化学療法を行い、手術後にもまた術後化学療法を行うという治療法が選択されました。
私は海外に在住しているため、副作用のために処方される薬剤は日本国内のものとは異なるかもしれませんが、基本的に化学療法に使われる抗がん剤は日本の標準と同じ薬剤です。
術前化学療法による副作用
術前化学療法は、アドリアマアイシン(A)とシクロフォスファミド(C)を組み合わせたAC療法で、乳がんの代表的な抗がん剤治療だそうです。3週間ごとに4サイクルの投与を行いました。
事前に担当医から、抗がん剤はがん細胞の増殖を防ぎ死滅させる一方、同様に増殖が速い正常な細胞に作用してしまうと聞いていたため、副作用が辛くても我慢しなければならないなと決めていました。
それに、乳がんを治療している方々のブログなどを読んでいると、私の副作用はかなり軽い方なのではないかと思います。
まずは、抗がん剤投与当日は、全く副作用は現れませんでした。唯一、投与中に事前に点滴される吐き気止めによる眠気が襲ってくる程度ですが、それもすべての点滴による投与が終わるころには消えてなくなります。
全4サイクルの1日目は、まだ身体に抗がん剤が浸透していないためか2日目まで全く何もありませんでしたが、3日目に突然激しい吐き気が襲ってきました。食べ物によっては臭いを嗅ぐだけで吐き気がし、食べられないものが出てきました(私の場合、ブロッコリー、メロン等)。この吐き気には、オンダンセトロン8mgを8時間毎に服用しましたが、各サイクル最低1回、時には3回はどうしても吐かずにはいられませんでした。
2~4サイクル目は2日目にはもう吐き気が襲ってきました。吐き気を感じる2日~6日目には、頭が重くぼーっとする感じがあり、2、3日はほとんどベッドに横になって過ごしました。
下痢はさほどひどくはないものの、この吐き気がある期間に便が軟便になり、さらに肛門周囲が爛れる(ただれる)ことがあったのは、抗がん剤が排出されていたためと思われます。食べられるものをできるだけ食べていたため、便秘は全くありませんでした。
抗がん剤投与前の白血球数は正常値内の6,500個/μlでしたが、2サイクル目の投与後1週間後の白血球値が1,010個/μlまで下がってしまったため、白血球を増やす働きを持つフィルグラスチム300μgを5日間注射しました。しかし、数値は1,270個/μlにしか上がりませんでした。
この時は何らかの感染症が疑われたため入院し、精密な血液検査と主治医による経過観察がなされました。ジカ熱感染までもが疑われましたが、幸い感染症は見られなかったため、再度フィルグラスチム300μgが注射され、白血球数の改善が確認された上で、退院および3サイクル目の抗がん剤投与が1週間遅れで実施されました。
この後、3サイクル目にも抗がん剤投与後1週間後の白血球数を検査し、3,000個/μl以下であったため、フィルグラスチム300μgを5日間注射し、4サイクル目も同様でしたが、手術を控えていたため輸血を行いました。
この輸血後にすぐ、常に付きまとっていた頭が重くぼーっとする感じがさっと消えてなくなったことから、ヘモグロビン減少による貧血が原因であったことが分かりました。
爪は黒くなりましたが、脆くはなりませんでした。髪の毛や体毛(眉毛・まつ毛を含む)の脱毛は、1サイクル目に訪れ、4~5日間で髪の毛の3分の2が一気に脱けてしまいました。
その後、一部の産毛が残った頭は、まるでオランウータンのようでしたので、2サイクルの2週目を過ぎ、頭皮が敏感な時期を過ぎたところで、残った髪を坊主頭に刈ってしまいました。
術後化学療法による副作用
抗がん剤の4サイクル目投与から約1ケ月後に手術をし、手術後約1ケ月後に術後化学療法を始めましたのでこの2ケ月間に髪・体毛は生え始めて来ました。
手術後の病理検査では、腫瘍の大きさ4cm、リンパ節転移9個、ホルモンレセプター陽性、HER-2陰性、癌細胞の増殖能8%、病理ステージⅢAでした。
術後化学療法は、ドセタキセルの3週間毎・4サイクルの投与を行いました。担当医からは、ドセタキセルの副作用は一般的にAC療法よりも強く表れ、中には投与中アレルギーから呼吸困難を起こす患者もあるので、すぐに知らせるようにとの説明を受けていました。
しかし実際には、投与中もその後もほとんど重篤な副作用は現れず、AC療法による化学療法時より、QOLはずっと安定していました。
全4サイクルとも、投与中には一切の副作用を感じませんでした。AC療法では苦しめられた吐き気も、ドセタキセルでは全くありませんでしたので、毎日脂肪分の少ない自分用の食事を調理し、食べることができました。
1サイクル目の投与後2日目に、38.8度の発熱がありました。そのため、本来は投与後5日目から5日間注射をするように指示されていたフィルグラスチム300μgを前倒して注射し、感染症を防ぐように心がけました。とは言え、発熱はこの時が最初で最後で以降は全くありませんでした。
全サイクルとも、投与後1週間は下痢もしくは軟便になり、肛門周囲が爛れたのはAC療法の時と同じでした。さらに投与後5日程経って、突然胃のあたりが痛み出しましたが、専門医に処方された胃酸抑制薬のオメプラゾール、抗痙攣鎮痛剤で簡単にコントロールできました。
全4サイクルで計8回くらいは胃痛がありましたが、毎回ひどくなる前に鎮痛することができました。
白血球数の低下も、AC療法の時と同様に各サイクルの投与後必ず見られたため、投与後5日目から5日間フィルグラスチム300μgの注射をしました。それでも4サイクル目投与前の白血球数は3,000個/μlを切ってしまったため、再度フィルグラスチム300μgを注射し、投与も1週間延期せざるを得ませんでした。
へモグロビンの数値は一貫して低く貧血気味でしたが、AC療法の時に感じたような頭が重くぼーっとする感じは一度も感じませんでした。
爪はACの時同様に黒くなり、さらに今回は脆くなり、常に爪の先が割れてギザギザになってしまいました。術前化学療法後、手術と術後の回復期に生えてきた髪の毛は、1サイクル目では全く抜けませんでした。このまま脱毛しないのかな、と嬉しく思っていたら、2サイクル目の投与後2週間したところで抜け始めました。
抜け方はACの時のように一気にではなく、2~5日間くらい抜けた後、脱毛はいったん止まり、3・4サイクルのやはり投与後2週間後に同様に少しずつ脱毛し、結局また眉毛もなくなってしまいました。
全体的に、AC療法よりも3週毎ドセタキセルの方が副作用は少なく、ドセタキセル投与時にはほとんどベッドに横になることはありませんでした。また、多くの方に現れる副作用の口内炎も、私にはどちらの療法でも現れませんでした。
とにかく、食べられるものをよく食べて体力を落とさないように気を付けたことと、AC療法の2サイクル目で白血球血が異常に下がり入院したことから、あまり人と接せず家に籠ってのんびりしていたこともよかったのかもしれません。副作用の現れ方は人によって千差万別とのことですが、少しでもご参考になれば嬉しいです。
[参考記事]
「母はロキソニンの副作用で脳幹梗塞になりました(実例)」
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