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乳がん体験南さん編⑬私の癌は治療法がないので不安です

 

この記事は「乳がん体験南さん編⑫3回目の抗がん剤で生理が止まった」の続きです。

……………

いよいよ、TC療法(抗がん剤治療)4回目。最後の抗がん剤を投与する日が来ました。

最後の抗がん剤、本当に最後の治療・・そう思いながら、ただひたすら薬剤を見ていました。

抗がん剤を投与した後、看護師さんに呼び止められました。

「これで、治療が終わるけれど、不安なことありますか?」

そうです、私の場合、この後、無治療となり経過観察のみになります。

「えっと・・。」

その時、人前で泣いたことがなかったのに、思わず涙ぐんでしまいました。

「えっと・・。これで、治療が終わること・・。トリプルネガティブのためこれしか治療法がないことが・・。」

そう言うのが精いっぱいでした。私は、ずっと他の人の前で泣きたかったんだ・・そう感じました。

看護師さんは、うんうんとうなずきながら、

「みんな、不安に感じるんですよ。でもね、再発や転移をするかも、とオロオロしながら生活をするより、笑って、いろいろ考えない方が、免疫力がアップするんですよ!」

と励ましてくれました。

正直、笑えないよ・・と思いました。治療法がある方をいいな、とうらやましく思いました。

なにか、病院とのつながりが無くなった気がして、とてつもなく不安になったのです。

でも、頑張るしかない、頑張れ、私。一分でも一秒でも長く、頑張るしかない。家族のために、両親のために、友達や支えてくれている人のために、そして何より自分のために。そう、言い聞かせました。

抗がん剤の投与は、本当に大変でした。確実に体に変化は起きます。あちこち痛いし、かゆいし、だるいし、嫌になります。爪だって紫色に変色してしまうし、髪の毛も抜けることがあります。女性の場合は生理が止まってしまい、更年期障害のホットフラッシュのような症状が出てきます。食べ物もおいしく感じません。醤油系のものなんて、苦くて口にしたくもありません。

ですが、抗がん剤は正常な細胞に影響があるけれど、癌細胞をやっつける効果もあるのです(効果があると「信じたい」というのが正直な感想です)。いろいろな説や考え方があるけれど、抗がん剤を投与したことは、私にとってプラスになった気がします。

無治療となってからも、1年に4回、診察を受けています。もうすぐ術後3年になりますが、術後2年半の時にCT検査を行い、右胸にしこりがありました。ですが、超音波検査を行い、良性と判断されました。再発も転移も今のところありません。同時再建をした部分の傷もだいぶ薄くなってきましたし、腹筋もできるようになりました。

こうやって少しずつ、以前の日常に戻ってきています。

よく、「キャンサーギフト」という言葉が使われますよね。この言葉は「がんになってから、人生の中で色々気付かされることがある」という意味で使われる言葉です。がんにならなければ見えなかった、分からなかったものが良く見えるようになったということです。私はまだ修業が足りず、その言葉を受け入れることはできません。

確かに乳がんになって、気がついたことはたくさんありました。いろいろな人に支えてもらっている、ということも身をもって知りました。でも、その分、家族など様々な人を傷つけたのも事実です。迷惑をかけたのも事実です。

そして、自分自身、毎日笑っているだけじゃありません。1日たりとも、病気の事を忘れたことはないのです。ちょっと咳が出ただけでも転移していないか、とヒヤヒヤしています。お風呂に入り、胸やお腹の傷を見るたび、頑張れ、って言い聞かせているんです。こっそり、お風呂場で泣いたりしているんです。

でも、今の私ができることは、当たり前の毎日をきちんと過ごすこと。後悔しないように、しっかりと自分や家族と向き合って生きていくこと。笑って、泣いて、怒って。

いつまでこんな幸せな日常が続くか分からないけれど、続くと信じて。

大丈夫!と前を向いて。でも、時には振り返って過ごしていこうと思っています。

終わり

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