この記事は「乳がん体験 南さん編⑥手術ではお腹の皮で乳頭を作った」の続きです。
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いよいよ退院です。
私が退院することを子供たちは知りません。サプライズで退院したら、どうなるのかな?なんて考えていたのです。案の定、学校から帰ってきた二男は激しく驚いてくれました!長男はやっぱり何事もなかったようにふるまっています。
久しぶりに4人そろっての夕食は、いつもより何だか楽しいものになりました。当たり前が幸せなんだと、改めて気が付いた瞬間でした・・。乳がんになる前は、「お父さんも私も働いているんだから、家の事も手伝ってよ!」と子供たちをしかっていましたが、でも、そんな日常がこんなにも幸せで、崩れるときはあっという間なのだと感じました。
体は相変わらず、お腹の皮が突っ張っている感じで、お腹のテープが貼られている部分がかぶれたり、胸がチクチクと痛んだりしていました。腹直筋が片方ないので、座る、立つ、横になる、起き上がる・・といった動作にとても苦しみました。シャンプーをする、という動作も腹直筋を使っていたんですね。
結構大変でした。
そして、手術後1か月で取り出した乳房の検査結果が出てきました。車の運転ができないので、この日も主人と一緒に行きました。結果を聞きに行く時、トリプルネガティブでも予後が良いタイプもあるし、抗がん剤が効きやすいタイプもある。私、頑張ったからきっと大丈夫!と思っていました。
ですが、組織診断報告書を私の前に差し出した先生の顔が戸惑っているように感じました。
「まず、順を追って説明していきますね。取り出した腫瘍は3㎝。やはりトリプルネガティブでした。」
先生がそう、おっしゃります。
確かに、用紙にもそう書かれています。用紙をじっくり見ていると診断報告書に見慣れない英単語が書かてていたのです。
「先生、このMetaplastic carcinomaって、なんですか?」
そう聞くと、先生は赤いペンで「化生癌(扁平上皮癌)」と書きました。
「扁平上皮化生癌はですね、特殊型なんです。私も過去に2人ほどしか診ていません。この癌は本当に珍しくて、症例がほとんどない。しかも、抗がん剤の効果は乏しいんです。」
え?と思っていると、さらに先生は、「一般的に抗がん剤の効果が乏しい」と書きながら、「効果が乏しいので、抗がん剤を勧める先生もいれば、勧めない先生もいる。効果はわからないです。どうしますか?」と聞かれました。
隣で主人が、「どういった癌なんですか?過去のお二人はどういった治療を行ったんですか?」と聞いていましたが、先生自身も症例が少なすぎてわからない、と。過去のお二人は若い方は抗がん剤を使用し、ご高齢の方は使用しなかった、とのことでした。
予想をしていなかった結果に、私は黙るしかありませんでした。
特殊型って?
先生でもよくわからないって?
そんな乳がんがあるの?
治療法がないってこと?
いろいろな疑問が出てきました。
でも、答えは一つです。生きるためならたとえ数%でも、どんな治療でも受ける覚悟はできています。
「先生、抗がん剤やります。たとえ、効果がなくてもやります。」
そう答えました。
先生は、うなずきながら、「若いので化学療法(抗がん剤)が勧められる」と書き加えました。その上で、「一般に抗がん剤の効果が乏しい」と書かれたところまで、矢印がぐっと引かれました。
「では、来週から基本的なものを行いましょう。抗がん剤の使用は短くて良いですよ。抗がん剤はTC療法と言います。4回だけ使用しましょう。」とお話しされました。
主人も私も家に帰るまで、話をしなかったのを覚えています。家に帰ってお互いに違う部屋へ移動してしまいました。主人もインターネットで、(化生癌)について調べていたのだと思います。
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