製薬会社が新しい薬の保険認可を得るためには臨床試験を行なう必要があります。この臨床試験を治験と言いますが、それだけではなく、既に販売されている薬が他の薬と比べてどれだけ効果が違うかなどを調べるための臨床試験もあります。この臨床試験を自主臨床試験といいます。
製薬会社が大学などに臨床試験を頼む場合、製薬会社の関係者がその試験に関わっていては「利益相反」となり問題となるのですが、国内や海外ではこの利益相反に関して多くの事件があります(利益相反とは中立的な立場で行わなければいけない判断を一方の利益のために行なう行為のこと)。
医薬品に関する利益相反の事例(犯罪行為)をまとめてみました。
①武田薬品工業の「ブロフレス」(降圧剤)
ブロフレスの臨床試験はブロフレスとアムロジピン(降圧剤)を比べて、どれだけの効果の違いがあるのかを確認するために行なわれています。
武田薬品工業の社員がブロフレスの臨床試験を行なっている京都大学EBM共同研究センターに出入りをし、臨床試験計画を作ったり、データの分析などを行っていることが判明しています(この社員は臨床試験が終わった後に京都大学EBM共同研究センターに転職)。
さらには、ブロフレスを服用することでアムロジピンより心筋梗塞や脳卒中などを抑制できるという偽のグラフを用意したり、色々とブロフレスに有利になるように改ざんをしています(本当は2つの薬の効果に差はなかった)。
武田薬品工業から京都大学に約28億円近いお金が奨学寄付金として渡っています。
②ノバルティスファーマ社の「ディオバン」(降圧剤)
京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学がディオバンの臨床研究(自主臨床試験)を行なったのですが、その研究にノバルティスファーマ社の社員が関わっていたことが判明しています。
この社員は臨床試験計画を作ったり、研究成果をグラフにまとめたり、データの改ざんなどを行っています(この社員は逮捕されている)。データの改ざんは「ディオバンは他の降圧剤より心筋梗塞や脳卒中などを抑制する」というものです。臨床試験の結果から、他の同じ作用を持つ薬よりも脳卒中などの予防効果が高いと宣伝し、大きな利益を手にしています。
これらの5つの大学には合計約10億円近いお金が奨学寄付金として渡っています。
③ノバルティスファーマ社の「タシグナ」(抗悪性腫瘍剤)
ノバルティスファーマ社がタシグナの臨床研究を行なっていた東京大学から、試験に参加していた患者の個人的なデータを得ていたり、臨床試験の計画書を作成していたことが明らかになっています。
この件について東京大学は記者会見を行なっていますが、その日はSTAP細胞の調査委員会の「調査中間報告」が発表された日と同じです。東京大学は話題をSTAP細胞にそらす為に同じ日に会見を行ったとしか考えられません(笑)
④ブリストルマイヤーズ社の「スプリセル」(慢性骨髄性白血病治療薬)
この臨床試験はスプリセルによる慢性骨髄性白血病の有効性などを調べるために東京大学などで行われています。ブリストル.マイヤーズ社の社員がスプリセルの臨床試験の計画書作成に関わっていたことが判明しています。
東京大学への寄付は5000万円。
⑤協和発酵キリンの「ネスプ」(赤血球造血刺激因子製剤)
札幌東徳洲会病院が行なっていたネスプの臨床試験に協和発酵キリンの社員が関わっていたことが判明しています。この社員は臨床試験の計画を作ったり、データの入力などを行なっていました。さらに協和発酵キリンは臨床試験に参加した患者の個人情報も入手しています。
⑥1991年から2012年までに製薬会社が違法な販売活動により、行政から請求された罰金は総額は約300億ドル(今のレートで約3兆円)あります。例えばファイザー社がブルガリアなどの公務員に200万ドルの賄賂を渡した事件で、1500万ドルの罰金を払っています。
1991年以来では、239件の罰金支払いがあり、罰金の支払いは総計302億ドル(約2兆3500億円)に及んでいる。
政府の保健プログラムへの過剰請求は、主に州メディケイドプログラムに対する医薬品価格での詐欺行為であった。
また、医薬品の違法な販売促進に対する罰金が最大のものであった。
2010年前半に至る最近の研究期間では、支払われた罰金のうちグラクソ・スミスクライン社、ジョンソン&ジョンソン社、アボット社の3社が全体の3分の2を占めていた。
ワースト3社のうちグラクソ・スミスクライン社がトップで、危険な糖尿病剤アバンディアの適応外使用の販売促進を含む数々の違反で罰金は31億ドルに上った。「薬害オンブズパースン会議」より引用
⑦子宮頸がんワクチンの副作用を調べる副作用検討会の委員の7割が製薬会社と関係があったと報道されていますが、もはや医師は製薬会社の思い通りに動く人形と思った方がいいです。
ニュースになった事例だけでもこんなにも多くありますが、表に出ていない不正な臨床試験や販売活動を合わせるとどれくらいあるのでしょうか。
私は製薬会社が臨床試験に口を出すのは「昔から行われている習慣」と思っていますので、多くの医薬品の臨床試験で不正があるのではないかと思っています。
武田薬品工業の「ブロフレス」のように効果が無いものを効果があるように見せるためにグラフを操作するのはやってはいけませんよね(笑)
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