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緑内障の原因は食生活なのか

緑内障(りょくないしょう)は、視神経が徐々に障害され、放置すると視野が狭まり、最悪の場合は失明に至る病気である。日本では失明原因の第一位であり、40歳以上の20人に1人が発症するとされる。

これまで緑内障は「眼圧」が主な原因と考えられてきたが、近年では正常眼圧緑内障の患者も多く、眼圧だけでは説明がつかないケースが増えている。その中で、生活習慣や特に「食生活」が発症リスクや進行に関与している可能性が注目されている。

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緑内障と酸化ストレス

緑内障の根本原因の一つとして、「酸化ストレス」が挙げられる。酸化ストレスとは、体内で過剰に発生した活性酸素が細胞や組織を傷つける状態である。視神経は酸素消費量が高く、酸化的なダメージに非常に弱い。特にミトコンドリア機能が低下すると、視神経の損傷が進行しやすくなると考えられている。

ここで重要なのが、食事の内容である。高脂肪食や加工食品、精製糖質を多く含む現代的な食生活は、体内の酸化ストレスを増大させることが知られている。逆に、抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロテノイドなど)を多く含む食品を摂取することで、酸化ダメージを軽減する効果が期待されている。

ビタミンとミネラルの不足

ある研究では、緑内障患者の血中ビタミンA、C、E、亜鉛、セレンなどの抗酸化栄養素の濃度が低下していることが示された。これらの栄養素は、視神経を保護し、炎症を抑える働きを持っている。特に亜鉛は視神経の再生や保護に不可欠であり、不足すると神経の修復が遅れる。マグネシウムも血管拡張作用を持ち、視神経への血流を改善する可能性がある。

また、ビタミンB群、特にB12や葉酸の欠乏も視神経障害と関係がある。高齢者でよく見られるB12欠乏性視神経症と緑内障は、臨床症状が似ており、鑑別が難しい場合もある。B12は主に動物性食品に含まれるため、菜食主義や偏った食生活をしている人は特に注意が必要だ。

血糖値と緑内障の関係

糖質の過剰摂取は、インスリン抵抗性を招き、慢性的な高血糖状態を引き起こす。このような代謝異常は、微小血管障害や神経障害を引き起こし、緑内障のリスクを高めると考えられている。糖尿病患者は緑内障の発症率が高いことも知られており、血糖コントロールが視神経の保護に重要であることを裏付けている。

さらに、高血糖状態では体内の終末糖化産物(AGEs)が増加し、これが視神経の細胞死を促進するとされている。AGEsの生成を抑えるには、糖質の質と量を見直すことが不可欠である。

カフェインやアルコールの影響

一部の研究では、過剰なカフェイン摂取が眼圧の一時的な上昇を招くとされている。特に1日3杯以上のコーヒーを常飲する人は、緑内障のリスクがわずかに高まる可能性があるという報告もある。また、アルコールは一時的に眼圧を下げるものの、長期的には視神経の健康を損ねる要因になる可能性もあり、過度の摂取は推奨されない。

地中海式食事法と緑内障の予防

地中海式食事法とは、オリーブオイル、ナッツ、野菜、果物、全粒穀物、魚を中心とした食生活である。近年、この食事パターンが緑内障の予防に有効であるとの報告が増えている。特にオメガ3脂肪酸は、神経保護作用や抗炎症作用を持ち、視神経の健康維持に寄与する。

加えて、ナッツ類や緑黄色野菜に含まれるルテインやゼアキサンチンといったカロテノイドも、目の黄斑部だけでなく視神経にも有益である可能性がある。

食生活の改善ができること

以上のように、緑内障のリスクや進行は、食生活と密接に関連している可能性がある。では、具体的にどのような食生活が推奨されるのか。

  1. 野菜と果物を多く摂る:特に緑黄色野菜やベリー類には、ビタミンCやポリフェノールが豊富。

  2. 良質な脂質を選ぶ:魚、ナッツ、オリーブオイルなどのオメガ3脂肪酸を中心に。

  3. 加工食品・精製糖質を控える:白砂糖、白パン、スナック菓子などは血糖値を急激に上げ、炎症を促進する。

  4. マグネシウムや亜鉛を意識的に摂取:海藻、ナッツ、豆類、全粒穀物などに多く含まれる。

  5. ビタミンB群をしっかり補給する:動物性食品、卵、発酵食品、海苔などが有効。

  6. 水分をこまめに摂る:脱水も眼圧の変動を引き起こす可能性があるため。

おわりに

緑内障は決して「不治の病」ではない。早期発見と継続的な治療に加え、日々の食生活の見直しによって、進行を遅らせ、QOL(生活の質)を高めることが可能である。「食は命なり」と言われるように、毎日の食事は健康への最も基本的な投資である。

現代社会において、眼病は老化現象ではなく、生活習慣病の一つと捉え直すべき時が来ているのかもしれない。特に、緑内障と診断された人、あるいはその予備軍とされる人は、今日からでも食事内容を見直し、視神経に優しい生活を心がけることが重要である。

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