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スマホと視力低下の関連性:眼科医が語る対策法

現代社会において、スマートフォン(以下、スマホ)は私たちの生活に欠かせない存在となっています。SNSのチェック、仕事の連絡、動画視聴、ゲームなど、日常的に画面を見続ける時間が急激に増加しています。

その一方で、視力の低下や眼精疲労を訴える人も増加の一途をたどっています。実際、眼科を訪れる患者の中には「最近、スマホをよく見るせいか、目がかすむ」「夕方になると目が重くなる」といった悩みを抱える方が多く見受けられます。

本記事では、眼科医の視点からスマホと視力低下の関連性を明らかにし、その予防や対策法について具体的にご紹介します。


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スマホ使用と視力低下のメカニズム

1. 近距離視作業による目の負担

スマホを見る際、私たちは30cm前後の非常に近い距離で画面を凝視しています。長時間にわたる近距離視作業は、目の筋肉、特にピントを合わせるために働く「毛様体筋(もうようたいきん)」に過度な負担をかけます。

毛様体筋は、水晶体の厚みを調整することでピントを合わせますが、長時間酷使されると柔軟性を失い、遠くを見た際にピントが合いづらくなる「仮性近視(調節緊張)」の原因になります。これが慢性化すると、実際の近視に進行してしまう可能性もあるのです。

2. ブルーライトの影響

スマホの画面からは、ブルーライトと呼ばれる波長の短い高エネルギー可視光線が発せられています。ブルーライトは網膜に到達しやすく、長時間の曝露により網膜細胞への微細なダメージが蓄積する恐れがあります。

また、ブルーライトは体内時計を乱す作用もあり、就寝前にスマホを使うことで睡眠の質が低下し、眼の回復が妨げられるという悪循環も生まれます。

3. まばたきの減少とドライアイ

スマホに集中していると、自然とまばたきの回数が減ります。まばたきの回数が通常の半分以下になることもあり、これにより目の表面の涙が蒸発しやすくなり「ドライアイ」の原因となります。ドライアイは目のかすみや異物感、疲れ目を引き起こし、視力にも影響を及ぼします。


子どもへの影響と近視の進行

特に注意すべきは、成長期の子どもへのスマホ使用です。近年、学童期の近視が急増しています。文部科学省の統計によると、小学生の約30%、中学生では約60%、高校生に至っては70%以上が近視とされています。

子どもは目の成長過程にあり、眼軸(目の奥行き)が伸びると近視が進行します。スマホの過剰使用は、この眼軸の伸びを加速させる可能性があります。また、外遊びの減少も近視を助長する要因です。太陽光に含まれるバイオレットライト(紫光)は近視抑制効果があるとされており、屋外活動の重要性が再認識されています。


スマホによる視力低下を防ぐ対策法

眼科医として推奨する具体的な対策を以下にご紹介します。

1. 20-20-20ルールを実践する

アメリカ眼科学会(AAO)も推奨する「20-20-20ルール」は、20分に一度、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るというものです。これにより毛様体筋を休ませ、目の緊張を和らげることができます。

2. 画面との距離を保つ

スマホはなるべく30〜40cm以上離して使用するようにしましょう。あまりに近すぎる距離での使用は、ピント調節機能に過剰な負担をかけます。特に子どもには、親が使い方を一緒に見守ることが大切です。

3. ブルーライトカット対策をする

画面設定でブルーライトをカットする「ナイトモード」や「目に優しいモード」を活用しましょう。ブルーライトカット眼鏡や保護フィルムを使用するのも有効です。

4. 定期的に外に出て太陽の光を浴びる

毎日1〜2時間の屋外活動が、子どもの近視抑制には効果的とされています。大人も自然光を浴びることで目の回復力が高まるほか、体内時計の調整にも役立ちます。

5. 就寝1時間前のスマホ使用は避ける

就寝前にスマホを見ると睡眠の質が下がり、眼の疲れが回復しにくくなります。できれば1時間前にはスマホの使用を控え、紙の本を読んだり、ストレッチをするなどしてリラックスした時間を過ごしましょう。

6. まばたきを意識する

画面を見ているときは、意識的にまばたきをするよう心がけましょう。目薬の使用や加湿器の活用も、ドライアイ対策として有効です。


眼科医に相談すべきタイミング

次のような症状が見られた場合は、早めに眼科を受診しましょう。

  • 急な視力の低下

  • 目のかすみや焦点の合いづらさが数日以上続く

  • 頻繁な目の疲れや頭痛

  • まぶたのけいれんやチカチカした光が見える

  • 子どもが目を細めて物を見るようになった

視力は一度失うと回復が難しいため、「まだ大丈夫」と思わず、定期的な検診を受けることが重要です。


おわりに:スマホ社会で目を守る意識を

スマホは非常に便利なツールですが、目にとっては負担が大きいのも事実です。特に長時間の使用や、近距離での作業が続くと視力の低下や目の不調を招くことになります。

しかし、正しい使い方を心がけることで、スマホによる視力低下はある程度予防することが可能です。大人も子どもも、スマホとの付き合い方を見直し、定期的な目のケアと休息を取り入れて、目の健康を守っていきましょう。

未来の自分の視力のために、今日からできることを一つずつ始めてみませんか?

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