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ヒルドイドを美容目的で使うことによる功罪。医療事故に繋がる危険性

この記事は40代の女性に書いていただきました。

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突然飛び込んできたニュース

 成人アトピー治療中の私は日課の朝風呂を終え、この日も、普段通り鏡の前で皮膚科から処方された保湿剤「ヒルドイド」を顔や首、手指にまんべんなく延ばしているところでした。

 その時、ふと一本のニュースが飛び込んできました。簡単に説明すると保険適応の病気以外の目的(美容目的)でヒルロイドを使っている人が多いことで、ヒルロイドの処方を制限する可能性がありましたが、それを見送ったというニュースです。

 本来、ヒルロイドはケロイドの治療などを目的に使うときだけ保険が適応されますが、それを美容のために使っている人が多いのです。その目的以外で使われた医療費は100億円という推計もあります。このお金は日本国民が負担しているので、ある意味犯罪に近いと言えるでしょう。

アトピー性皮膚炎の治療薬が美容目的で大量に処方されている疑いがある問題で、厚生労働省は、処方量の制限を見送ることを決めました。アトピー性皮膚炎などの治療に処方される保湿剤「ヒルドイド」をめぐっては、「肌が若返る」などの口コミが広がり、美容目的で使用されている疑いが指摘されています。

このため、厚生労働省は、処方量の制限などを検討していました。しかし、がん患者の団体などから、「抗がん剤の治療で起きる皮膚の乾燥やかゆみを緩和するため、ヒルドイドは欠かせない」などの要望書が出されたということです。

厚労省は、「全身疾患の患者を配慮する」として、処方量の制限については見送ることを決め、25日の中医協で明らかにしました。ただ、美容目的など不適切な処方がないか、医療機関などへの審査を強化するということです。(24日18:47)TBS系ニュースより

美容目的でヒルドイドを自費購入しているケースもある

 私自身に関していえば、アトピーの治療目的で使用する「ヒルドイドクリーム0.3%」は、ステロイド軟膏などと一緒に皮膚科から健康保険適応で処方され、一方、目元などの保湿目的(美容のため)に使用する「ヒルドイドローション0.3%」については、全額実費で購入しています。

 ローション一本千円という価格は、同様の化粧品の値段を鑑みればかなりリーズナブルな印象です。しかもアンチエイジング目的という点から見ても、個人的にはそこそこ効果があるような気もします。私はもうすぐ五十歳になりますが、未だに自身のblogやTwitterなどに一切修正なしの写真をアップできていますので(笑)

 重度のアレルギー体質というハンディを負って生まれた私は、子どもの時からアトピー性皮膚炎に悩まされ続け、若い頃からいわゆるポイントメイクしか施せませんでした。

 しかし、メイクを試せない、愉しめないアレルギー体質だったことがむしろ、五十歳の今、周囲の同じ年頃の女性から遥かに抜きん出た美肌を維持したらしめたというのは、なかなか面白い現実であり神様の悪戯のようにも思えます。化粧品を塗るときも、落とすときも肌に過剰なストレスを与えます。それがないだけ、肌は美肌を保てているのです。シワは年を取れば仕方がないですが。

保険適応の部分と自費診療の線引きは曖昧

 顔に塗るヒルドイドローションについてはきちんと自費購入している私であっても、正直…時折は保険適応で処方されている軟膏(ヒルドイドクリーム)をついでに美容目的で塗っちゃえ!という場合はままあることも否めません。保険適応の部分とそうでないところがごちゃ混ぜだという指摘もごもっともなお話でしょう。

 先に挙げたニュース記事の通り、現状「ヒルドイドローション」も私のようにがんの履往があり、抗がん剤治療も繰り返しているよ、というケースであれば保険適応を主張し、三割負担で入手することは可能なのです。

 現実に抗がん剤治療で入院を要するほどの状況だった時には、皮膚の乾燥や薬の副作用でボロボロになってしまう肌を守る目的で、保険適応でヒルドイドローションを出してもらっていた時期もかなり長かった私です。

 しかし、癌が無事に経過観察扱いとなり、通院によるがん治療が実現した現在、あくまでも化粧下地代わりに顔に塗るのが主目的のヒルドイドローションについては自費で購入。皮膚科でアトピーの治療としてステロイド軟膏と併用して塗付するためのヒルドイドクリームに関しては従来通り健康保険で出してもらうというルールにしています。

医療保険財源の逼迫と患者の利益とのせめぎ合い

 ですが、上記はあくまでも「私の」ルールでしかありません。違法な手段で不正にヒルドイドを入手することは幾らでも可能ですが、その結果本当にヒルドイドを必要とする患者さんにまで影響を及ぼすかもしれません。このままの状態が続くのであればヒルドイドを保険適応外にする処置が取られるかもしれないからです。

 昨年9月、大手企業の健康保険組合で作る「健康保険組合連合会(健保連)」は、本来の目的から外れ、あくまで美容目的で処方を希望し使用する女性が余りにも多く、結果、社会健康保険財源を逼迫している実態を事由に、ヒルドイドのみの単独処方については保険適応から外す旨の提言を発表しました。

 しかし翌月10月31日、日本皮膚科学会は「ヒルドイドを保温剤として使用せざるを得ない患者に大きな不利益を生じかねない」と、保険による処方の制限に反対する声明を行ないました。

 以降、ヒルドイドの保険適応の要否に関しては医療の専門家の間でも、健康保険制度の面からも、単純にネット民の雑談の中でも…様々な場で、それぞれの立場から論議論争が繰り広げられていたなかでの、先日の厚労省の「見送り」決定のニュース。

 今後、いったいどのような展開になるのか…成人後もアトピー性皮膚炎に悩む一患者としてヒルドイドでの保湿が必要な私は、しかしある一定の美容効果も知ってはいるだけに、微妙な心持のまま世論の動きを注視しています。

自己判断の投薬は医療事故増加にも

 ヒルドイドに限らず、本来の目的を逸脱して処方されている薬剤は幾らでもあるようなイメージもあります。例えば、風邪薬を「心配だから」と多めに出してくださいと希望する患者も、患者は望んでいなくても医師が「心配ですからお薬は多めに出しておきましょう」と処方する場合も、実際にはよく見かける光景です。

 しかし、その余った風邪薬を「症状が同じだから」と同居する家族など第三者に服用させた結果、思いもよらぬ医療事故に繋がったというのも、残念ではありますがかなり頻繁に聞く話です。

 ちなみに、処方された風邪薬(医療用医薬品:市販薬ではなく医師による処方を要する薬)を他人に譲渡したがために起きた事故の件数や事例について、厚労省や消費者庁の医薬品情報センター、国民生活センターのデータ等々…検索エンジンで調べてみましたが、ヒットするのは一般薬(市販で買える薬)の事故事例ばかり。私が本当に欲しい情報というのは手に入れることができませんでした。

 ただし、その一般薬全体の事故をみても、全体の半分以上を風邪薬による重大事故が占めている実例や、私自身がこれまで医師による処方の風邪薬で数回ショックを起こし、大事になった過去を鑑みるならば、現実には処方薬による事故、それに付随して自分が処方された風邪薬を安易に他人に服用させたことが原因による健康被害というものは相当数見受けられるんだろうなという気はします。関係省庁による公式発表がないからこそ余計に怪しいと思います。

 当然ですが、自分が処方された薬を他人に譲った結果、相手に副作用が生じたり、事故(例えばもらった薬によって眠気が生じ、相手が交通事故を起こしたなど)が起きた場合、譲渡した本人は法的な責任が問われます。

 ヒルロイドも風邪薬と同じです。ヒルドイドを美容目的に使う場合にも気を付けなければいけません。以下の宇多川久美子さんの記事を読んでいただければ分かりますが、ヒルドイドにより副作用が生じるかもしれないのですから。

「ヒルドイド」はお薬です。副作用がまったくないわけではありませんし、用法を間違えば、お肌を傷つけてしまう危険もないわけではありません。

たとえば、「ヒルドイド」には血流をよくする、いわば血液サラサラ効果があるので、出血したときに血が止まりにくくなります。出血性の疾患をもっている方には禁忌の薬です。

また、まだふさがっていない傷口に使ってしまうと出血が止まらなくなってしまいます。最近、「皮膚刺激感」の副作用報告が集積したことから「その他の副作用」に「皮膚刺激感」が追加されたんですよ。(宇多川久美子さん 薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長)

私のイチオシの保湿剤をこっそりお教えします

 ヒルドイドが本当に美容的効果が高いのかどうかについてはさておき、最後にこの記事をライティングしている私が試してみてとてもよかったと思うものを一つだけ挙げたいと思います。

 それは昔ながらの「ワセリン」です。寝る前の保湿やリフティングマッサージに使いたいということであればワセリンで充分だという印象はあります。

 ですが、朝の洗顔後に塗ると、脂分によって異様にテカりが生じ、化粧下地には余り向きません。脂分が抜けるまで時間を要し、塗ったあと三十分くらい置かないと、メイクの際に眉墨や口紅が乗らない点は今ひとつです。

 ワセリンのほうが自費購入のヒルドイドローションに比べて極めて安価で、入手も簡単にできます。私自身は朝のメイク前にはヒルドイドローション、夜はワセリンを使用して鏡を眺めつつ、少しでも気になる皺が目立たなくなるよう、毎日せっせとお顔のマッサージに余念がありません。

 化粧品のサイトを開けば高額なアンチエイジング系商品は実に数多く存在します。しかし、私が実際に幾つか試したそれらのうち、赤みや発疹などのトラブルが生じて皮膚科のお世話になった化粧品はあっても、使用によって決定的な効果がみられた商品というものはひとつもありませんでした。

 その辺りを考えれば、医薬品、そして化粧品の価値というのは恐らくその品質よりも「私はこんなに高額なアンチエイジンク製品を使用してるんだもの、きっといつまでも若くいられるわよね」というプラセーボ的効果のほうがむしろ大なのかしら。私はそんな結論に辿り着いてしまいます。

 ワセリンによりリフトマッサージの効果は如実に出ている(気がする)とはいえ、やはりそれなりに目元には実年齢を漂わせ始めさせている私です。

 その分、大人としての心豊かさを醸し出せている表情でいられますように…春には五十歳の誕生日を控え、鏡に映った自分の顔に今夜も問いかけています。

[参考記事]
「アトピー治療によるステロイドの副作用を食事で治した女性」

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. どうもありがとうございました!

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