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[医療ミス]人工透析の途中で針が抜け、400mlの出血

この記事は病院に勤める40代の女性に書いていただきました。

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医療ミスとは医療行為を行う中で医療従事者が行うべき最低限以上の確認や注意を怠った結果として起きたものをいい、医療過誤とも呼ばれます。

医療ミスは人為的な過誤であり、医療従事者が本来持ち得る知識や経験をもって対策を講じていれば発生を防ぐことができます。医療ミスや医療事故が発生すると院内では「インシデント・アクシデントレポート」を通じて全職員に周知徹底及び注意を呼びかけます。

私が勤めている病院でも医療過誤に近い出来事がありましたので、ご紹介します。私は医療従事者の一人として透析医療に従事しています。みなさんは人工透析をご存じでしょうか。「血液を入れ替える」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

医療ミスについて紹介させていただく前に人工透析について簡単に説明させていただきたいと思います。人工透析とは腎臓の機能が低下もしくは途絶した患者さんに対して行う治療であり、血液を体の外へ導き出し、血液に含まれる老廃物や過剰な水分を膜を通して取り除くことが目的です。透析患者さんの多くは一日おきに病院やクリニックに通い、3時間から5時間の透析を受けなければなりません。

人工透析では血液を体内から取り出し不要物質を取り除いた後、再び体内へ戻すために、2本の針を血管に刺して治療を行いますが、この2本の針に関連する医療ミス・医療事故が後を絶たないのが現状です。

私たち透析スタッフは2本の針を穿刺する前に血管や皮膚の状態を確認します。具体的には聴診器を使って血液の流れる音を聴いたり、皮膚の上から血管に触れ、狭窄や閉塞がないかなどを確認します。その際に「体調は普段と変わらないか」「健康に関して気になることはないか」など質問し、患者さんの状態に合わせた安全な透析を行うことができるよう情報収集を行います。

その日もいつも通り透析が始まりました。患者さんは針を刺し終えるとテレビを観たり、本を読んだり、傾眠したりとそれぞれの過ごし方で透析の終了を待ちます。

この間、私たちは絶えず巡回し異常がないか確認しています。私がいつものように巡回していると、女性の患者さんの悲鳴が聞こえました。私が患者さんのもとに駆け寄ると2本の針のうち血液を体内に返すための針が抜け落ちていました。針の刺さっていた傷口からの出血と、抜け落ちた針の先から血液の流出があり、400mlほどの出血がありました。真っ白なシーツに染み渡った真っ赤な血液は実際の量を誤認させるほどよく映えます。

血液を返すための針が抜け落ちると、透析装置は「体内から血液を汲み出し続ける装置」へと変貌してしまうため、早期の発見と迅速な対応が必要です。

患者さんは錯乱状態ですがバイタルに異常はなく、私は透析装置を停止すると同時に止血を行いました。患者さんが落ち着き始め,状況を説明しながらいくつか質問をすると以下のようなことがわかりました。
・針を刺す部分が痒く,透析中も頻繁に掻いていた
・針をテープで固定している部分に広範囲に渡り、塗り薬を塗布していた

このことから、固定のために貼付したテープが塗り薬により、その粘着力を失った上、患者さんが固定部の周囲を頻繁に掻きむしったためにテープが剥がれ、針が脱落したと考えられます。

私が穿刺やテープ固定を施したスタッフに透析を開始する際の状況を尋ねると「穿刺部の痒みや塗り薬の塗布については知らなかった」「健康状態を確認しなかった」と回答がありました。

皮膚の痒みや塗り薬の使用は事前質問や穿刺部位の観察の段階で確認していれば適切な対策を講じることは可能であり、スタッフの怠慢や注意の不足により起きたとも考えられます。幸い、患者さんの健康状態への影響はなく、現在も変わらず当院で透析を施行しています。

塗り薬を使用している場合はテープを貼付する部位を清拭し、ベタつきがなくなってから固定する、必要に応じて粘着力の強いテープを使用するなど対策を初めから講じるべきでした。このように医療ミスは医療従事者の怠慢により起こります。

透析患者さん以外にも病院を利用されるみなさんは、このような医療ミスに巻き込まれることのないよう、健康状態の主張や不審に思ったことがあれば、遠慮なくスタッフまでお申し付けください。

[参考記事]
「死亡原因の第3位が医療ミスという現実」

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